国内外で注目を集めるクリエイティブ産業に対して、国や自治体が積極的にバックアップをしているのをご存じでしょうか。
高齢化社会が進む中で、地域活性化のためにクリエイティブの力を活用している自治体や企業が増えてきています。
そこで今回は、デザインの力を活用して町おこしをした取り組みをご紹介します。
「クリエイティブへの評価が高い地域」クリエイターの方や、「地域で活躍しているデザイナーと出会いたい」クライアント企業の方はぜひ、こうした取り組みに注目してみてください。
※情報は2020年2月26日時点のものです。
目次
【沖縄県石垣島】USIO Design Project
沖縄県・石垣島の魅力を再発見するために、デザインの力を活用しているプロジェクトです。
島の市役所(石垣市観光文化課)が主催しており、世界中から400人以上のクリエイターが参加しています。
2013年からスタートした「地域×デザイン」プロジェクトは、「お土産」「旅」「物語」の3つから成っています。
石垣島のお土産
「島でつくられているモノ」をリデザインし、島の魅力を再発見するためのプロジェクトです。
名産品の10アイテムを、デザイナーと島の生産者によってリニューアルし、島内外で販売しています。
加工食品だけではなく伝統工芸品もあり、石垣島の良さに触れられるアイテムが揃っています。
2016年には、USIO Design Projcetでリデザインされ名産品アイテム5点が、台湾の2016金点設計奨(Golden Pin Design Award)のパッケージデザイン部門を受賞しました。
石垣島の旅日記
「島でしか過ごせない時間」を再発見するためのプロジェクトです。
石垣島には年間100万人もの観光客が訪れます。
USIO Design Projectでは、観光で石垣島を訪れる人達のための旅行プランを募集し、新しい石垣島体験の価値をデザインしまています。
石垣島の物語
観光ガイドに掲載されていない、小さな体験と物語を再発見するためのプロジェクトで、2016年から実施されています。
サイト上では、「石垣島を感じる52の物語」が、日本語・中国語で掲載されています。
また、CCライセンスで利用が可能な石垣島のフォトライブラリ「GALLERY」など、クリエイティブの力を活用した魅力的なコンテンツも。。
石垣島のプロジェクトには、デザイナーだけではなく多彩なクリエイターが携わっており、クリエイティブな活動への評価の高さをうかがい知ることができるでしょう。
【徳島県・神山町】神山しずくプロジェクト: SHIZQ
2012年に神山に移住したデザイナーの廣瀬圭治(ひろせ・きよはる)氏が立ち上げたプロジェクトです。
神山町の人口は約5,000人で、杉の木をはじめとした沢山の資源がありますが、それらを活かせる主幹産業がありませんでした。
また神山町では、30年前と比べて川の水が約3割に減ってしまいました。
水量を増やすためには、過密になっている杉を切り、山肌に光が届くようにすることが重要なポイントです。
人工林は人の手で間伐を行い整備する必要があるのです。
そこで、杉を活用する方法として、「神山しずくプロジェクト」がスタート。
地場産業を生み出すだけではなく、インターネットを駆使して販路を世界に広げることで、都会の力を借りない独自のビジネスモデルを構築しています。
杉の新たな価値に挑戦
神山しずくプロジェクトの杉製品は、木を回しながら削る「ロクロ手挽き」で制作されています。
杉は木目が粗くて柔らかいという特徴があり、扱いづらい素材です。
しかし、間伐材を活用するために職人が力を合わせ、新しい製品が生み出されました。
コップやボウルといった使い勝手の良い日用品が数多く見られるSHIZQ。
杉は扱いづらいですが、非常に軽いので普段使いのアイテムにピッタリで、ギフトとしても人気があります。
今までにない杉の新たな価値に挑戦した製品は、神山町ならではの一品といえます。
地域資源と地元の職人の力を活用し、製品が出来上がるまでに多くのクリエイターが参画。
デザインの力で独自の製品を生み出し、地域活性化や地域の自然を守るプロジェクトで、国内外で注目を集めるとともに高い評価を得ています。
きる職人はたった一人です。
【群馬県】山名八幡宮
840年以上の歴史を持つ山名八幡宮。
「安産子育ての宮」として多彩な活動を行っており、2017年に『神社から広がる地域再生 [安産子育ての宮「山名八幡宮」地域の再生]』でグッドデザイン賞を受賞しています。
山名八幡神社では、神社が「祈りの場」と「公共の場」の2つの役割を担うよう、次の100年に残すデザインを構築するために、デザイナーが活躍しました。
OME製品がメインだった授与品を見直し、約20種類のオリジナルデザインの授与品を制作、ロゴや建築物の見直しにもデザイナーが携わっています。
地域コミュニティを支える「場」のデザイン
「場づくり」では、子育ての孤立化・悩みを緩和するための親子カフェ、食育を促す天然酵母のパン屋といった、食に関する施設だけではなく、日本文化と英会話を両軸とするグローバル教育スクールや、発達障害児を支援する放課後等デイサービス。
そしてアトピーなどの子供のためのスキンケアコンセプトショップ、さらにみんなで自由につくる公園や、地元農家の経営を安定させ、母親の雇用を創出する6次産業の工房を、神社の敷地内に併設するなどして、安産子育てと地域の社会問題を解決する「場」を提供しています。
地域課題の解決にデザインの力を活用した山名八幡神社。
地域の人々の居場所づくりが課題視される中で、自治体だけではなく公的な場として親しまれてきた寺社仏閣が、積極的な姿勢をみせてくれるのは嬉しいですね。
2017 GOOD DESIGN|グッドデザイン賞 神社から広がる地域再生 [安産子育ての宮「山名八幡宮」地域の再生]
【福島県いわき市】いわきの地域包括ケアigoku
政府は、今後ますます深刻化する高齢化社会に向けて、「地域包括ケア」を推進しています。
介護が必要な状態になったとしても、その人が希望する場所で最期まで暮らすことができるよう、仕組みづくりを行っているのです。
いわき市では、高齢化がピークを迎える2025年、高齢者の数が10.3万人になると予測されています。
2017年6月現在約34.6万人の方が暮らしていることを踏まえると、人口全体の32.9%が高齢者になるという状況です。
そこでいわき市では、「いわき市地域包括ケア推進課」が主体となって、地域・コミュニティづくりを実施しています。
2019年にはその取り組みが高く評価され、『地域包括ケア [いわきの地域包括ケアigoku(いごく)]』でグッドデザイン賞を受賞しました。
いごく地域を作る「官民共創デザインチーム」
「いごく」とは「動く」ということ。
「いごく」というくくりのもとで、医療や介護に携わる人だけではなく、多彩なプレイヤーが参画しコラボレーションしています。
いごく編集部には、WEB・紙・映像で多彩な情報を発信するために30~40代のフリーランスが参画。
いわき市地域包括ケア推進課の職員と、いわき市内のクリエイターやエディター、そしてライターが活動している官民共創のデザインチームです。
ウェブマガジン「igoku」と「紙のigoku」を柱として、情報発信だけではなく、医療・福祉・介護・障害、そしてまちづくりなど、社会包摂に携わる多彩なプロジェクトデザインを行っています。
形のないコミュニティデザインがデザイナーからの支持を集め、グッドデザイン賞を受賞したのは素晴らしいですよね。
老いは誰にでも訪れる問題です。
「老・病・死」にスポットライトを当てるいごくは、老いを自分事として捉えるきっかけにもなる大切な取り組みといえます。
デザインの力を町おこしに活用している地域とその取り組みとは? まとめ
デザインやクリエイティブの力を町おこし・地域おこしに活用している例は他にもたくさんあります。
地域おこし協力隊にクリエイターやデザイナーを起用しているケースも多く、こうした活動に参画してくれる地元のクリエイターを募集していることも少なくありません。
クリエイティブの力を地域の課題解決に役立てたい方や、クリエイターと協働で地域を盛り上げていきたい方は、こうしたプロジェクトに注目してみてくださいね。
新しい出会いや発見があるだけではなく、多様な人との交流によって、色んな刺激を受けることができるはずです!