デザインを発注する側にとっても受注する側にとっても、
- デザインの著作権はどちらにあるのか
- 著作権の譲渡はできるのか
気になりますし大切なことですよね。
著作権について曖昧なまま依頼を受けているデザイナーも少なくないと思います。
結論からいうとデザインの著作権はデザイナーにあり、依頼主とデザイナー双方の合意があれば譲渡は可能です。
ただし著作権の中でも「著作者人格権」は譲渡が不可能だったり、デザインの中でもロゴやシンボルマークの制作では著作権がそもそも認められなかったりと、注意しなければいけない点があります。
この記事では、
- 著作権の基本的な知識
- 著作権の譲渡やその注意点
について詳しく解説していきます。
目次
著作権とは
著作権とは「著作者の思想や感情が表現された創作物」を守るための法律です。
もちろんデザイナーが作ったデザインもこの創作物に含まれます。
せっかくデザイナーがいいデザインを作っても、契約の範囲を超えて利用されたり、盗用されたり真似されたりしてしまっては、仕事として成り立たなくなりますよね。
またデザインやデザイナーが守られる世の中でなければ、創作活動を続けていくことが難しく、文化も発展していきません。
著作権は「著作者の努力に報い、創作活動を続けていけるように」「文化を発展させるために」あります。
デザインの著作権は、デザイナー・依頼者どちらにあるか
デザインの著作権はデザインが生まれた瞬間から、自動的にデザイナー側に発生します。
これはどこにも申請する必要がなく、著作者の死後50年後まで保護され続けます。
(海外では現在著作者の死後70年まで著作権があり、日本も今後70年になるだろうと言われています。)
依頼者はデザイナーに報酬を支払いますが、それはあくまでデザインの制作を依頼し、契約の範囲内で利用することに対しての対価です。
依頼者は著作権の譲渡を受けない限り、契約外のデザイン利用や改変など一切できません。
ただしロゴやシンボルマークの場合は、デザイナー側でも著作権が認められにくいため、別の形で権利を守ることになります。
ロゴやシンボルマークは著作権ではなく商標権で権利を守る
ロゴやシンボルマークは性質上、盗作や真似など判断するのが難しく、デザイナー本人でも基本的に著作権は認められず、譲渡も行えません。
著作権の主張ができないロゴやシンボルマークは「商標権」で権利を守ることになります。
商標権は著作権と違い、自動的に発生することはありません。
特許庁に申請が必要で、登録には費用がかかります。
商標権の存続期間は10年で、更新することができますが、その都度更新費用も必要です。
デザイナーはロゴやシンボルマークの制作をする場合、似たものが商標登録されていないかよく確認しておきましょう。
著作権の譲渡
著作権には譲渡ができる「著作権(財産権)」と、譲渡ができない「著作者人格権」のふたつがあります。
依頼者がデザインの用途を限定されず、自由に使いたいときは「著作権(財産権)」の譲渡を受ける必要があります。
この場合は著作権(財産権)の譲渡が必要になる
依頼者側がデザイナー(依頼先が会社の場合はデザイン会社)との取り決めに縛られず、
- デザインを好きな媒体で使いたい
- デザインを好きなように改変、修正したい
場合は、デザインの全部・一部に関わらず著作権(財産権)の譲渡が必要になります。
原画の模写、トレースしたものの利用も著作権の譲渡なしでは認められません。
著作者人格権は譲渡が一切できない
「著作者人格権」は著作者の人格を守るためのものです。
これはどんな場合も一切譲渡することができません。
著作者人格権は、
- 公表権(作品を公表するかどうか、どのように公表するかは作者の判断に委ねられる)
- 氏名表示権(作者の氏名を表示するかどうか、本名かペンネームかは作者の判断に委ねられる)
- 同一性保持権(作品のタイトルや内容を、著作者の許可なしに変えることできない)
これら3つの権利から成っています。
依頼主側が著作者人格権も含めて買い取りたいと考える場合は「著作者人格権不行使」という契約をデザイナーに求めるケースもあります。
これは「著作者人格権はあるけれど、使いませんよ」というものですが、これが法的に有効かどうかは判断が難しいところです。
著作権の譲渡はどうすればできる?
著作権の譲渡は「著作権譲渡契約書」を依頼者とデザイナーで結ぶことで成立します。
著作権の譲渡の範囲、金額などお互いに折り合うものかどうか、よく確認して契約を結びましょう。
デザインの著作権は、デザイナーと依頼者どちらにあるのか?譲渡はできるのか? まとめ
著作権はデザインが生まれた時点でデザイナー側に発生し、譲渡するまではデザイナーのものです。
依頼者はデザイナーとの取決めの範囲内の利用でよければ譲渡を受けずともデザインの所有、利用はできます。
ですが契約内容に縛られずに自由に使いたいのであれば譲渡を受ける必要があります。
その場合譲り受けられるのは「著作権(所有権)」のみで、「著作者人格権」は譲り受けられません。
またロゴやシンボルマークは性質上、著作物とは認められにくいので著作権ではなく商標権で保護する必要があります。
デザインを依頼する側も受ける側も、あとで揉めたりモヤモヤしたりしないように、著作権をしっかり理解した上で契約を結びましょう。