デザイナー

デザインにおける「必要なムダ」と「不要なムダ」とは?ムダを作るポイント

良かれと思って足したものが不要だった、逆にいらないだろうと思っていたものが、実は重要な役割を果たしていた。

こうした体験をしたことはありませんか?

これはデザインの世界でも起こりがちなことです。

たとえデザイナーでなくても、デザインにかかわるのであれば、「必要なムダ」と「不要なムダ」の違いについて理解しておくことが大切です。

今回は両者の解説とともに、無駄が必要な理由についてもご紹介します。

デザインに不要な「ムダ」と必要な「ムダ」

「ムダ」というと、一見不要なものに感じるかもしれません。

しかしデザインにおいては、捨ててはいけない「必要なムダ」と、できるだけ排除すべき「不要なムダ」が存在します。

まずは両者の特徴と違いについてご紹介します。

不要な「ムダ」とは

「不要なムダ」とは、本来の目的に沿わないもの、もしくはないほうがよい表現を指します。

例えば歩きやすい靴を開発したいとしましょう。

この時、デザインにおいて重視されるのは歩きやすさや履きやすさです。

しかし、開発を進めるうちに「こういう機能があったほうがいい」「売れ行きを伸ばすためにもっと目立つ装飾にしたほうがいい」という話になることもありますよね。

そうなると、歩きやすさという目的以外をかなえるための機能や装飾がどんどん追加され、最終的に本来の「歩きやすい靴」という目的が十分に発揮されないものが開発されてしまうことに。

こうした事例は、実は頻繁に起こっています。

機能や装飾を追加することは、決して悪いことではありません。

しかし、本来の目的がかなえられなかったり、それが最大限発揮できないような機能や装飾は、本来であれば不要だといえます。

つまり、一見華やかに見える装飾や色一つとっても、本来の目的を阻害するものであれば、それは不要だといえるのです。

これがデザインにおける「不要なムダ」です。

これを「足し算の考え方」といいます。

足し算の考え方は、特に新しいものを生み出す際に陥りがちだと言われています。

華やかにしたい、目立たせたいと機能や色を追加した場合、それが本当に本来の目的に沿ったものなのか、基本に立ち返って考えてみましょう。

必要な「ムダ」とは

一方、本来の目的をかなえるために、不要なものをそぎ落とすことを「引き算の考え方」といいます。

この時残った、本当に必要なものが「必要なムダ」です。

必要なムダの主な事例

例えばカレンダーを想像してみましょう。

カレンダーに求められる本質的な機能は、日付がわかることです。

この目的をかなえるためには、たくさんの色彩を多用するよりも、見やすいほうがいいですよね。

そのために余白を多く加えた場合、この部分は「必要なムダ」だといえます。

ほかにも、わかりやすく押しやすい大きなアイコンや見出し、シンプルなワイヤーフレームなどは、必要なムダを盛り込んだデザインだといえるでしょう。

このように本来の目的をかなえるために必要とされるムダのことを「必要なムダ」といいます。

主流になってきた「必要なムダ」の考え方

実際に最近では、コンプレクション・リダクションに代表されるような、シンプルなデザインを目指すデザイナーや企業が増えています。

コンプレクション・リダクションとは、必要最低限の色彩のみを取り入れたデザインのことです。

実際に、ツイッターやインスタグラムといったSNSをはじめ、プロダクトデザインなどでもこうした手法が一般化してきているのです。

「ムダ」が必要な2つの理由

ではなぜ、こうした「ムダ」が必要とされるのでしょうか。

主な理由を2つご紹介します。

頭に残りやすい

デザインがシンプルだということは、そのものの情報量が少ないということです。

そのため、本来の目的である情報や機能が頭に残りやすいのです。

装飾が多いものは頭に残りにくい

例えば家電の取扱説明書を思い出してみてください。

たくさんの情報が掲載されていますが、その内容を一度見ただけで覚えるのは難しいですよね。

これは「文字」という情報量が多いからです。

一方、ごちゃごちゃしたデザインもまた、必要な情報が頭に残りにくく、覚えにくいという特徴があります。

これは、色や機能といった「情報」が多いためだといえます。

「情報」というと、文字や画像などを思い浮かべる人が多いかもしれません。

しかし、色彩やボタンなども情報のひとつ。

これらを一度に処理しようとすると、特徴的な部分しか覚えられなかったり、ぼんやりとしか記憶に残らなかったりします。

必要な機能や装飾に絞ることは、本来の目的を伝えやすくすることにつながるのです。

見やすい・わかりやすい

余白などが多かったり、ボタンが少ないということは、その分本来の目的である機能や装飾が目立ちやすいということです。

たくさんの機能があると、ユーザーは迷ってしまいますが、必要な情報しかなければ、迷うことも少ないですよね。

このように、ユーザーのスムーズなアクションを促すためには、シンプルである程度余白のある、いわゆる「ムダ」のあるデザインが良いといわれています。

「必要なムダ」を作る3つの方法

「必要なムダ」を作る方法は多種多様ですが、今回は基本的な方法を3つご紹介しましょう。

1.余白を作る

パンフレットやWEBサイトはもちろん、プロダクトデザインにおいても活用できる方法です。

色や文字をぎちぎちに詰め込んだり、必要以上にボタンを増やしたりしていませんか?

こうした「不要なムダ」を減らすためには、十分に余白を作るのが効果的です。

実は、余白をつくるのはデザイナーにとっても勇気のいる行為なのだそう。

しかし、思い切って余白を作ることで、必要なムダが生まれ、本来の目的をかなえる機能や装飾がより目立つようになります。

2.使用している色の数を減らす

華やかさを出すために色を多用していませんか?

色がたくさんあると、本来目立たせたい機能や装飾が目立ちにくくなります。

色数を減らすと、見た目にすっきりするだけでなく、必要な機能が必要最低限の彩色で見えやすくなります。

むやみやたらに色を使わず、必要な色だけに抑えてみましょう。

3.文字間隔を広くとる

パンフレットや企画書、POPなどで使える手法です。

文字間隔を広くとることで、見やすさが増すだけでなく、文字数も限られるため、本当に必要なものしか残らなくなります。

結果、全体的に余白のある、見やすいデザインになるのです。

比較的簡単に取り入れられる方法ですので、ぜひ試してみては。

デザインにおける「必要なムダ」と「不要なムダ」とは?ムダを作るポイント まとめ

デザインには「必要なムダ」と「不要なムダ」があります。

何が必要なのかを理解したうえで、必要なものだけを残すことが、ユーザビリティの向上にもつながるでしょう。

デザインにかかわる場合は、ぜひ覚えておいてください。