国や自治体そして民間が、クリエイティブ産業の動向やクリエイター支援を資料にまとめているのをご存知でしょうか。
デザインのコト。では、こうした資料を基に、クリエイターを取り巻く環境や支援制度をご紹介しています。
今回は、日経クロストレンドが発表している「自治体マーケティング力ランキング」の、定観光人口増加率の高い地域をご紹介します。
国の積極的なインバウンド施策により、国内外から多くの観光客が訪れるようになった日本。
そんな中でも、観光人口増加率が高い地域では、どんな取り組みをしているのでしょうか。
クリエイティブの活用と絡めてご紹介いたします。
※情報は2019年12月26日時点のものです。
目次
「自治体マーケティング力ランキング」とは
日経クロストレンドは、定住人口・観光人口・関係人口の3つの数値から独自で算出した全国1,741市区町村の「自治体マーケティング力ランキング」を算出し、上位を発表しています。
算出方法
「定住人口」は、住民基本台帳に基づいて、2016年1月から2019年1月までの3年間の増減率を算出しています。
「観光人口」は、各都道府県が発表している2014年から2017年の観光統計を参考に、市町村別の観光いりこみ客数を抽出したうえで増加率を算出。
「関係人口」は、移住スカウトサービス「SMOUT」の運営会社カヤックlivingが算出している「ネット関係人口スコア」を使用しています。
さらにSMOUT上でのコミュニケーション数、自治体の公式SNSのフォロワー数や、そして自治体の人口バランスを加味。
3つの人口を、定住人口増加率50%、ネット関係人口スコア40%、観光人口増加率10%の比率で合算しています。
関係人口とは、定住人口と観光人口の間の数値で、その地域や地域の方々と多様に関わる人の数を指しています。
観光人口増加率ベスト5
観光人口増加率の上位5つの自治体はご覧のとおりです。
1位:福島県国見町 21.7
2位:福岡県吉富町 19.7
3位:千葉県神埼町 9.4
4位:北海道木古内町 9.2
5位:茨城県行方市 6.6
※2位の福岡県吉富町は「マーケティング力」の記事で紹介しているので、そちらをご覧ください。
1位:福島県国見町
福島県国見町は、2014年に6万7,000人だった観光客が、2017年には145万4,000人にまで増えました。
これは、2017年にオープンした道の駅「国見あつかしの郷」が大きく観光客数を引きあげた結果です。
国見まちづくり株式会社
国見あつかしの郷を運営しています。
道の駅の運営だけではなく、国見町の農業振興や6次産業化支援そして商業支援など、多彩な事業を実施。
情報配信やまちづくりのコンサルタントなど、多彩な活動を行っています。
国見あつかしの郷
従来シニア向けだった道の駅をファミリー向けとして訴求。
桃の出荷量全国9位という特色を生かして、地元で採れる桃を活用し、桃をベースにしたスイーツの販売にも力を入れました。
桃のシーズンである夏場以外の集客力低下を防ぐため、年間30~40ものイベントを開催。
親子で楽しめるスタンプラリーなど、ターゲットであるファミリー層に人気を集めています。
国見あつかしの郷では、ブランディング戦略を基に、地元の特産品である「桃」を軸にして効果的な施策を行っています。
情報配信や商品パッケージの制作など、随所にクリエイティブの力が活用されています。
国見町では、独自の「創業支援」も実施しており、起業をお考えの方にも嬉しい環境が整っています。
観光人口が増えることで関係人口が増加し、定住者も増えていくかもしれませんね。
3位:千葉県神埼町
平成26年4年現在、人口6,460人と千葉県で最も人口が少ない神崎町。
最盛期には、「関東の灘」と呼ばれ、酒蔵・味噌蔵・醤油蔵などの醸造業が盛んでした。
平成20年に「発酵の里協議会」を結成し、「発酵文化」をキーワードとした官民一体のまちおこしがスタート。
「発酵の里こうざき」として、サミットの開催や情報発信など多彩な施策を行っています。
道の駅 発酵の里こうざき
神崎町では、イベント開催時だけではなく普段から観光客に足を運んでもらうため、平成27年に道の駅を開設しました。
従来の道の駅とは異なり、道の駅がセレクトして全国の発酵食品を販売。
約500種類の発酵食品が購入できるセレクトショップとして展開しています。
健康志向・自然志向の高まりも追い風となり、観光客の数は年々増加しています。
神崎町では基礎額50万円の「移住・定住奨励金」を設けており、移住施策を積極的に行っています。
都心からのアクセスが良く、クリエイティブな仕事にもピッタリです。
観光人口が増加する中で、移住を検討する方も増えていくかもしれません。
4位:北海道木古内町
特別豪雪地帯に指定されるほど、雪深い木古内町。
平成28年には、北海道新幹線木古内駅が開通し、東京まで約4時間とアクセスが便利になりました。
また木古内ICの開通が予定されるなど、さらなる観光客増加が見込まれます。
道の駅 みそぎの郷きこない
2016年にオープンした、木古内のアンテナショップです。
2019年には来館者数200万人を突破しました。
観光情報に力を入れており、同南西部9町エリアの観光案内の発信を行っているほか、ホームページやSNSの運用にも力を入れています。
「木古内町観光情報」など、情報配信にも力を入れており、クリエイティブの力を活用した取り組みが随所で見られます。
クリエイターの活躍のフィールドが広がっているエリアです。
5位:茨城県行方市
霞ケ浦を擁する行方市。
2019年に策定された「行方市観光振興計画」によると、観光客は年々増え続けており、20117年度には629,649人を記録しています。
これは、2015年にオープンした「なめがたファーマーズヴィレッジ」の影響が大きくなっています。
行方市の観光施策
行方市では、観光施策のひとつに「情報発信の更なる推進」を掲げています。
これは、行方市訪問前に「アクセスの情報だけではなく、見所や名産品などの情報収集が積極的に行われている」というアンケート結果を受けたものです。
そこで、優先ターゲットに「首都圏顧客」を設定し、効果的なPR活動を実施。
美しい景観を積極的にPRしたり、Webなどで特産品情報の発信を行ったりします。
また、インバウンド需要に向けてSNSを活用し、地域情報の配信も積極的にしていきます。
行方市の観光施策は、クリエイティブの力を積極的に活用するものが多く、「クリエイターの活躍のフィールドが広がっている」といえるでしょう。
参考書籍:日経BP「最新マーケティングの教科書2020 BY日経クロストレンド」
観光人口増加率の高い自治体のクリエイティブな取り組みとは? まとめ
ご紹介したように、観光人口増加率が高い自治体では、道の駅など大型施設のオープンが大きく影響を与えています。
各自治体は地域の魅力を伝えるために、情報発信や商品開発に力を入れており、クリエイティブの力が活用されているのです。
新しいクリエイターと出会いたい方は、観光に力を入れている自治体に注目してみると良いかもしれませんね。