日本のクリエイティブ産業が注目を集める中で、国や自治体は積極的にクリエイター支援を行っています。
デザインのコト。では「地元に軸を置いて活躍しているクリエイターに仕事を依頼したい」というご要望にお応えすべく、クリエイター支援を積極的に行っている自治体をシリーズでご紹介しています。
今回は、兵庫県西脇市の「西脇ファッション都市構想」に注目。
地場産業である「播州織」を軸に展開する、全国でも有数の織物産地のクリエイティブ支援をご紹介します。
※情報は2020年2月27日時点のものです。
目次
西脇ファッション都市構想とは?
兵庫県西脇市は県のほぼ中央に位置しており、山と清流に囲まれた自然豊かなまちです。
「西脇ファッション都市構想」は、そんな播州織で発展してきた西脇を盛りあげるために、行政だけではなく播州織(ばんしゅうおり)に携わる人や事業所、そして団体が一丸となって取り組んでいるプロジェクトです。
平成28年に策定され、平成31年までの5年間の計画が進められています。
播州織に魅かれて移住してくる「育成デザイナー」を受け入れ、ファッションクリエイターとして育成。
さらに、製品を増やしたり西脇のブランド化を図ったりしています。
将来的には、『ファッションを志す若者が、「訪れてみたくなる」、「働いてみたくなる」、「住みたくなる」』まちづくりを目指す西脇ファッション都市構想。
単に地場産業の後継者を育成するだけではなく、にぎわいを創出する地域活性化事業としても注目を集めるプロジェクトです。
播州織とは?
播州織は、生地の開発から加工まで、すべての過程を産地の中で一貫生産しています。
そのため西脇市では、糸の染めや織り、そして加工といった各工程に携わりつつ、多彩な経験を積むことができます。
先染め織物である播州織は、糸を染めてから織るため、単色に見えるシャツでも3色の糸を使うことで、光の加減や見る角度でさまざまな表情を演出することができます。
糸の細さや素材を組み合わせることで、柄や風合いを自由に演出することも可能です。
自由度の高い織物だからこそ広がるイメージもあるでしょう。
播州織の持つポテンシャルの高さに魅せられ、多くのデザイナーやアーティストが播州織を使用した作品を発表しています。
デザイナー育成
デザイナー育成に参加したい方は、播州織を取り扱う事業所へ問い合わせを行うほか、ハローワーク経由などでも公募されているので、ぜひチェックしてみましょう。
応募後は試験及び面接が事業所で行われ、採用が決定します。
採用後は西脇市に住民票を移し、最長3年間市の支援を活用することで、働きながら研修が受けることができます。
支援は、研修生が必要な知識や技術を習得するためにかかる賃金だけではなく、住居費や指導料なども含む1ヶ月の上限が15万円と定められており、補助金の交付は、受け入れ事業者に対して行われます。
受け入れ先の事業所は、平成30年4月現在15事業所です。
デザイナー育成に応募したい方は、自分で事業所を選定する必要があるので、まずは各事業所の作品に触れてみてはいかがでしょうか。
「製品&事業所」では、播州織の事業所と製品の紹介をしていますので参考になさってください。
衣類だけではなくファッション小物やファブリックなど、事業所ごとに取扱製品に違いがあります。
活動中の育成デザイナー
公式サイトでは「デザイナー育成」ページ内で、22名のデザイナーのインタビューや紹介を掲載しています。
育成デザイナーとして活動をしている方の中には、ファッションやデザインの学校出身者や、関連する職に就いていた方が多くいらっしゃいます。
5年間で22名が参画というのは、地域創生の取り組みの中でも高い数値といえます。
デザイナーが感じる西脇市や播州織の魅力に触れてみたい方は、ぜひ個別インテビューを読んでみてください。
コワーキングスペース「CONCENT」
人と人、アイディアと産地、そして今と未来を「つなぐ装置」として活用されているコワーキングスペース。
ミシンや機材等、制作に必要な機材がそろうだけではなく、多彩な資料も完備しています。
アパレルCADやパターンスキャナー、各種OAソフトやボディもあるので、試作から撮影まで一貫して行うことができます。
施設内はミシンスペースだけではなく、デザインスペース・撮影スペース・倉庫スペース、そして談話スペースの和室に分かれています。
利用時間は10:00~17:00で月曜日が休館日です。
西脇ファッション都市構想のデザイナー研修生は時間外利用が可能です。
デザイナー育成研修生の利用料は1ヶ月で3,000円。
市内事業所に勤務していない一般利用者でも、1回1人1,000円もしくは1ヶ月で5,000円で利用することができます。
読書などの設備利用以外は、利用料が掛からないのも嬉しいポイントです。
資源と技術をいかして課題を解決する「わざ」
サスティナブルな暮らしが注目を集める中で、世界的にファッション業界への風当たりが強くなっているのをご存じでしょうか。
西脇市では、播州織で培われた技をいかすことによって、自然環境に優しい製品づくりを行っています。
例えば、多品種小ロット生地のコスト低減に対応するために技術支援を行ったり、産地のエネルギーコスト削減に取り組んだり。
残糸を利活用することによって、コスト削減及び高付加価値化に役立てることもできます。
こうした取り組みを行うことで、持続可能な社会の実現を目指すとともに、オンリーワンの最終製品の創出を目指しているのです。
地域活性化のために、地場産業にクリエイティブの力を活用している自治体は枚挙にいとまがありませんが、地球環境に配慮しサステナビリティを意識した取り組みを行っている自治体はまだ少ないといえるかもしれません。
豊かな自然に囲まれた西脇市。
こうした環境への配慮もまた、西脇市へ移住するデザイナーが多い背景にあるのかもしれませんね。
西脇市ものづくり・あきない経営革新支援事業
西脇市では、経営革新などに挑戦している市内の事業所を支援するために経費の助成などのバックアップをしています。
参考に、令和元年に募集された第2回の募集の様子をご紹介します。
新規事業の立ちあげに活用できる補助金は少ないですが、事業立ちあげ後に役立つ補助金や支援ばかりです。
西脇市でデザイナーとして活躍している方だけではなく、西脇市に軸を置いて活動している起業も対象になる可能性がありますので、ぜひご検討ください。
事業や予算の範囲内での補助となりますので、予算額に達した場合には募集期間内でも募集が終了してしまいます。
利用を検討したい方は、早めに情報収集をしてください。
新製品・新商品・新技術・新サービスの開発と導入
西脇市内で事業化を進める、革新性・実現性の高い新製品や新商品の開発及び、新技術や新サービスなどの創出を対象としています。
審査会による審査を実施し、対象経費の1/2、上限200万円までの補助金を交付します。
新設備・新生産方式の導入
生産や業務の効率化などにつながる機械や設備の購入を対象としています。
書類審査を実施し、対象経費の1/4(経費の下限は50万円)、上限50万円までの補助金を交付します。
販路開拓・拡大
取引先の拡大などを目的とした、商談会や展示会などへの出展を対象としていますが、自らが主宰しているものや販売を主目的としているものは対象外なので注意が必要です。
また、新しい事業展開を図る目的で実施する購入型クラウドファンディングも対象になります。
書類審査を実施し、対象経費の1/2、上限30万円までの補助金を交付します。
支援アドバイザーの派遣
経営革新や経営改善、事業計画の策定などに関する相談や助言を行う、支援アドバイザーを派遣します。
利用料は無料ですが、利用回数は2回までと決められています。
兵庫県西脇市西脇ファッション都市構想とは?サポート内容をご紹介! まとめ
兵庫県西脇市の、西脇ファッション都市構想をご紹介しました。
ファッション関係のデザイナーを支援している自治体は大都市が多く、地方ではまだ少ない傾向にあります。
西脇市は、単に地場産業の振興のためにデザイナー育成を支援するだけではなく、起業後のバックアップなど、体系的な支援を受けることができる環境が整っています。
また、ブランディングにも行政が主体となって積極的に取り組んでいるので、今後さらに注目度があがっていくことでしょう。
ファッションデザイナーの方だけではなく、デザイナーやクリエイターをお探しの方も、ぜひ西脇市の取り組みに注目してみてくださいね。
新しい発見や出会いがあるかもしれません!