家から一歩外に出れば、必ず見かけるマンホール。
「マンホール蓋のデザインなんて、今まで全く気にしたこともない」と思っている方も多いでしょう。
また「どれも一緒でしょう?」と思っている方もいるのではないでしょうか。
最近のマンホール蓋は、ご当地によって異なるデザインだったり、金属色ではなくカラフルにペイントされているものもあるのです。
今回は、マンホール蓋にデザインをする目的や最近の傾向、また実際のデザインについてご紹介しましょう。
目次
何でマンホール蓋にデザインを?
「マンホール蓋のデザインを思い浮かべてみてください。」と言われたら、どのようなデザインを思い浮かべるでしょうか。
丸型で金属色で…大体はサビているから赤茶色になっていて…と形や色はわかるのに、デザインまで詳細に答えられる人は、多分ほとんどいないでしょう。
従来のマンホール蓋は、金属製のため、雨が降った時などにマンホールの上を歩いたり、自転車で走った時にすべらないように凹凸があるのが特徴です。
そのため、凹凸はあったけど、どのようなデザインだったかまでは記憶にない人もいるのです。
日本初のマンホール蓋のデザインは沖縄市
マンホールは地中にある上水道や電気、光ファイバーなどを人が入って点検するための穴として使われています。
中でも一般的なのは下水道ではないでしょうか。
最初にマンホール蓋にデザインを施したのは、沖縄市でした。
沖縄市は1972年の本土復帰後、環境美化のために下水道の普及をすすめたいと思っていました。
しかし、市民は「下水道=汚いもの」というマイナスイメージが強く、下水道について関心はありません。
市と制作会社は、もっと下水道について、そして環境美化について興味をもってもらいたいという想いからマンホール蓋のデザインを考えたのです。
マンホール蓋に地元で馴染みがあるデザインで、かつ目でも楽しめるものをと、沖縄で親しまれているガーラという魚をモチーフにしたデザインが誕生しました。
今までに通算で100種類以上のマンホール蓋のデザインを行ってきた沖縄市。
沖縄市に続けと、その後、全国各地で次々とご当地デザインのマンホール蓋が誕生していくのです。
マンホール蓋のために旅をする?
デザインを施したマンホール蓋は、最近では「ご当地マンホール蓋」とまで呼ばれるようになりました。
全国各地で誕生し、今では各自治体のご当地マンホール蓋を集めた「マンホールカード」まで存在しているのです。
2019年10月1日現在、454自治体の539種類のマンホールカードが存在しています。
マンホール蓋のデザインは地域の特徴を生かしたデザインが施されています。
それを見たいがために、旅をする人もいるのです。
主にマンホール蓋のデザインに取りつかれ、全国津々浦々のマンホールを探しに旅に出ている人達を「マンホーラー」と呼んでいます。
このマンホーラー達は、地元以外にも旅先で出会ったマンホール蓋のデザインについてSNSを通じてコミュニケーションをすることで、お互いに情報を得ているのです。
全国のマンホーラー集結!マンホールサミットとは
そのマンホーラー達の祭典が「マンホールサミット」です。
全国から選りすぐりのデザインのマンホール蓋が展示されたり、全国のマンホールカードが販売されるだけではなく、マンホール蓋の関連グッズの販売や、マンホール蓋愛についてのトークショーも行われています。
また、下水道の見学を行い、マンホール蓋だけではなく、マンホールと下水道について興味を持ってもらうイベントも行っているようです。
平成26年から毎年開催されており、平成30年度のサミットは北九州市で行われました。
このサミットでは、自称マンホーラーが全国から約5000人が集まりました。
サミットへの参加者はまだ少ないですが、全国にはサミットに参加できなかったマンホーラーも多く存在しているようです。
マンホール蓋のデザインの特徴
まず、マンホール蓋へデザインを施す方法として2種類の方法があります。
中でもデザインした板をあわせたマンホール蓋は、邪道であるという一部のマンホーラー達の見解もあります。
鋳物に直接デザインしたもの
従来のマンホール蓋と同じ作り方をしているもので、蓋の凹凸をデザインしているものだけではなく、鋳物に直接、色を塗って仕上げているものもあります。
鋳物にデザインした板をあわせたもの
マンホールの直径よりも小さな板にデザインしたものを鋳物のマンホール蓋にあわせたもの。
板の上の凹凸がないものが多いため、滑り止めとしてマンホールの端に凹凸があるものが多いのが特徴です。
デザインの特徴としては、主に次の3つが挙げられます。
アニメなどのキャラクターデザイン
その地域がアニメの舞台だったり、アニメの作者の生誕地の場合に、それらのデザインが用いられることが多いです。
また、その地域と関係のある著名人や芸能人をキャラクター化したデザインが用いられることもあります。
名所旧跡や景色をモチーフとしたデザイン
有名な名所旧跡がある地域や、絵葉書になるようなきれいな景色のある地域では、それらをモチーフとしたデザインが用いられることが多いです。
地元の人にも観光客にもマンホール蓋を通じて、地域に興味を持ってほしいという想いがあるのでしょう。
市区町村の植物や特産物などをモチーフとしたデザイン
その地域に特化した植物や、市区町村の花、そして魚などのその地域の特産物がモチーフとなったデザインもあります。
特に花のモチーフは、マンホール蓋の中心から放射線上にデザインされたものを多く見かけることができます。
探してみたいマンホール蓋デザインをご紹介!
ご当地デザインにはどのようなものがあるのでしょうか。
従来からの作り方である鋳物に直接デザインを施したものを2つと、邪道だとも言われているデザインした板を鋳物にあわせたものを1つご紹介したいと思います。
広島市 千羽鶴デザイン

広島県と言えば、原爆ドームをまず思い浮かべる人もいるでしょう。
この原爆ドームがあるのは広島市。
そして、この地は平和を願う街でもあります。
現在においても世界各国から千羽鶴が広島市に贈られてくるそうです。
その千羽鶴をモチーフとしたこのマンホール蓋は、「世界中の人に、広島へ来てもらいたい」「広島から世界へ平和を発信していきたい」という想いが込められたデザインなのです。
町田市 傘をさすリスのデザイン

町田市に町田リス園という小さな動物園があります。
このマンホール蓋は雨水用のマンホールなのですが、町田リス園にちなんで、リスが雨の中、傘をさし、降る雨をながめているデザインです。
イラストではなく、シルエットを切り絵風にしているところが特徴的。
このデザインは町田市と近隣の大学との連携によるもので、大学生がデザインした案を市民が投票して決定されたものでもあります。
倉敷市 児島ジーンズストリートデザイン

日本産のジーンズといえば、岡山県倉敷市の児島地区。
ここには、ジーンズストリートがあり、日本だけではなく世界各国からも根強いジーンズファンがいます。
このジーンズストリートにも、素敵なデザインが施されたマンホール蓋があります。
ワンウォッシュされたジーンズのようなインディゴブルーをバックに施された白い文字。
それはまるでジーンズにシェービング加工をしたかのような色合いです。
ジーンズストリートにはお似合いのマンホール蓋ではないでしょうか。
こちらは、デザインされた板と鋳物をあわせたマンホール蓋ですが、デザイン面の色合いがきれいに出ています。
マンホール蓋なので、このデザイン面がすりきれたとしても、ジーンズのようにいい味がでてくるのではないでしょうか。
ご当地デザインも?!じわじわとブームがきているマンホール蓋のデザインとは? まとめ
デザイン性のあるマンホール蓋で地域活性化を図ろうとしている自治体も多く、マンホール蓋のデザインを公募している自治体もあります。
また、地域のことを知ってほしいという想いから、ご当地デザインのマンホール蓋をふるさと納税の返戻品としている地域もあるのです。
今後、マンホール蓋のブームが来るかもしれません。
これから外出する時には、マンホール蓋のデザインに目を向けてみてはいかがでしょうか。