香水が大流行した18世紀の頃、王族階級の人達はお抱えの調香師が作った香水を、ガラス職人が趣向を凝らした香水瓶に入れて楽しんだといいます。
現代においても人々を魅了する香水瓶は数多く存在し、香水を普段付けていない人でもインテリアとして買っていくほどです。
そこで今回は、「香水」よりも「香水瓶」にフューチャーし、魅力的な香水瓶のデザインについてご紹介します。
目次
偉人達も愛した香水と香水瓶
「香り」は、紀元前という遥か昔から、人々の生活の中になくてはならないものでした。
現代のような香水は紀元前の時代には存在しておらず、ミイラの防腐や保存のため、もしくは化粧品として香料が使われていました。
また、宗教の儀式の際にはお香を炊くことも。
「香り」を身にまとうことをはじめたのは、古代エジプトの絶世の美女で知られるクレオパトラだといいます。
クレオパトラは無類のバラ好き。
それが功を奏して、バラの香りで古代ローマの英雄たちを虜にし、女王として君臨したというエピソードまであるほどです。
さらに香水文化は、アルコールが発見されたことでより発展します。
10世紀以降、ヨーロッパの各地で香水が作られ、18世紀には王侯貴族などの上流階級の人達が、お抱えの調香師を雇うほど大流行したのです。
この頃、調香師が作った香水を保管するために、職人が趣向を凝らして作った色々な素材の香水瓶が誕生します。
磁器製やガラス製のものなど、職人の手によって作られた香水瓶は、どれも魅惑的なデザインであり、芸術作品でもあったのです。
香水が身元判明の原因に
フランス革命で処刑されたマリーアントワネットについてご存知の方も多いと思います。
美人であったのに、フランス国民に対して軽率な態度をとったり、お金を湯水のように使う浪費家だったため、国民からは嫌われていた人物です。
このマリーアントワネットが付けていた香水がウビガンという、人気がある調香師が作った高級香水でした。
革命が起こる数日前にパリからの脱出を図ります。
夫のルイ16世と子どもたちと一緒に馬車に乗り、逃亡するのです。
いつもよりも遥かに質素な出で立ちをしていました。
もし、途中で身分を問われることがあれば、侯爵夫人の侍女と従僕の一家だと答えるつもりだったのです。
しかしながら、ドイツの国境付近で身柄を拘束され、連れ戻されてしまいます。
その際にマリーアントワネットの衣装ケースから出てきたのが、ウビガンの高級香水でした。
香水が入っていた瓶はシンプルな薬瓶でしたが、香水瓶が入ったブック型のケースはバロック様式で作られた最高級のものだったのです。
侍女がこのような高級香水や高級なケースを持つようなことはできません。
マリー・アントワネットが処刑されたのは、この香水のせいなのかもしれません。
香水瓶にガラス製が多いのはなぜ?
香水が大流行してから、職人の手によって作られた香水瓶。
王侯貴族の趣味趣向により、デザインもそれぞれですが、ガラス製のものが多いとは思いませんか?
それは香水を保管するにあたって、劣化してしまう条件があるのです。
劣化の原因にはこのようなものが挙げられます。
- 紫外線
- 熱
- 酸素
- 温度変化
ガラス製の容器の場合、これらの条件を克服することができるのです。
ガラス素材自体が自然劣化や経年劣化に強いだけではなく、保管する内容物に対しても、次のようなメリットがあります。
- 酸素透過性やガス透過性の低さ
- 耐熱性や熱伝導率の低さ
- 耐摩耗性
- 耐腐食性
これらのメリットにより、ガラス製は香水を保管するのに優れているため、香水瓶として使われることが多いのです。
香水瓶のデザインを紐解くと…
ファッションと同じように、時代によって香水瓶の素材やデザインにも変遷があります。
石材やガラスを使った古代の香水瓶から始まり、現代においては服飾メゾンが作った香水瓶にいたるまで、数多くの香水瓶のデザインが存在しています。
その中でも香水が大流行した18世紀から20世紀初頭には香水は高級であり、高貴なものでした。
それゆえ、香水を購入することができるのは王侯貴族などの上流階級のみ。
香水を保管する香水瓶においても宝飾品のような存在で芸術性の高いものが好まれました。
しかし、現代はどうでしょうか。
香水瓶のほとんどがシンプルなデザインではないでしょうか。
そのデザインの変遷について紐解いていきましょう。
芸術的センスただよう有名デザイナーの香水瓶
日本人に愛好者も多いルネ・ラリック。
箱根にはルネ・ラリック美術館があり、ラリックが制作したジュエリーや香水瓶が展示されています。
そのラリックは、1860年にフランスに生まれましたが、最初から香水瓶を作る職人ではなかったのです。
20代から40代まではジュエリー作家でした。
この頃、伝統的なジュエリーのデザインは、ダイヤモンドやルビーといった高価な宝石を使ったものだったのに対して、ラリックが作るものは、オパールやアクアマリンといった手に入りやすい宝石を使った、斬新なデザインのものでした。
新進気鋭のジュエリーデザイナーであったラリックは、1900年のパリ万博でブレイクし、セレブからも愛されます。
パリのヴァンドーム広場にジュエリーショップをオープンした後、お店の近所だった香水商のコティに、香水瓶のラベルデザインをしてもらえないかと依頼されるのです。
ラリックは、ラベルではなく、香水瓶のデザインをしたいと反対にコティに懇願。
それからのラリックは、次々とガラス製の作品を制作し、1912年にはジュエリーデザイナーを辞めて、ガラス工芸家へと転身するのです。
それからというもの、ラリックと香水商のコティの香水ビジネスは大成功します。
ラリックの作る香水瓶は装飾性が高く、芸術性に富んだデザインであり、まさに芸術作品です。
シンプルさを追及?現代の香水瓶
現代のデザインは「限りなくシンプル」を追及しています。
多くの人に香水を普及させ、購入してもらうためには、香水の中身もさることながら、香水を入れる容器においても、コストパフォーマンスがよく、量産に耐えうるものでなくてはならないのです。
そのような風潮から、香水瓶においてもシンプルさを求められるがゆえに、装飾性の少ない香水瓶が広く浸透しています。
特に男性用の香水においては、装飾性がなく、薬瓶のようにシンプルなデザインのものが多いのが特徴といえるでしょう。
飾っておきたい!オシャレな香水瓶デザインとは?
現代の風潮としてシンプルな香水瓶のデザインが大半を占めますが、その中でも装飾性に富んだ香水瓶を紹介しましょう。
女性向けの香水の中から、オシャレな香水瓶を選びました。
香水を使い終わった後でも、ドレッサーの上にいつまでも飾っておきたいオシャレなデザインです。
GUERLAIN ミツコ
GUERLAINのミツコという香水をご存知でしょうか。
ダイアナ妃やチャップリンもこの香水のファンだったと言います。
もともとGUERLAINはフランスのブランドですが、1919年にフランスでジャポニズムが大流行した年にできた香水です。
ミツコが初めてできてから100周年を記念して作られたのが、この「ミツコ 100周年 アニバーサリー エディション」。
日本の栄華の時代を思わせるような、金箔と書がコラボされた香水瓶デザインは、なんとも神々しいデザインではないでしょうか。
JILL STUART クリスタルブルーム ビーラブドチャーム
5枚の花びらを持つ3つの花が束ねられている、香水瓶のキャップ、かわいいと思いませんか?
花々はクリア~ピンクのグラデーションカラーとなっていて、台座にも花のおしべとめしべをモチーフにしたレリーフが施されています。
この香水瓶は、まるでラリックの時代の香水瓶を思わせるデザインともいえます。
キャップのクリスタルがジュエリーのようでもあり、香水を使い終わった後でもインテリアとして飾ることで、部屋にお花をいけたような雰囲気になることでしょう。
使い終わった後も飾っておきたい!オシャレな香水瓶のデザインとは まとめ
香水瓶のデザインがかわいかったり、オシャレだったりすると、使い終わった後でも瓶を捨てずにそのまま飾ってみたり、ルームフレグランス用のボトルとして再利用したり、一輪挿しにすることもできます。
香水をプレゼントする時や、香水瓶を海外旅行のお土産として購入する時には、シンプルなデザインものもではなく、装飾性に富んだオシャレな香水瓶を選んでみてはいかがでしょうか。