校章との出会いは、幼稚園や保育園に通いはじめた頃からと言っていいほど、私たちにとって身近な存在です。
そんな校章ですが、日本だけのものではありません。
海外へ目を向けてみると、それぞれの地域性に富んだデザインの校章を見ることができます。
今回は、校章について考えるとともに、世界の校章デザインについてご紹介しましょう。
目次
校章=学校のロゴ?
企業においてのシンボルマークであるロゴが「社章」であるならば、「校章」は学校のロゴともいえるでしょう。
校章は、学校を象徴するためにデザインされたシンボルマークであり、他校と識別するためのものとして用いられています。
幼稚園や保育園の頃は、まだ幼く、物心がついていないこともあるため、「校章」自体についての認識もさることながら、そのデザインについても意識されることはまずありません。
しかしながら、小学校に入ると、学校の正門や、校旗などの施設や所有物に記されています。6年間という長い年月にわたり、同じ学校に通い、多くの行事やイベントを行うことにより、だんだんと自分が通う学校の校章デザインについて意識しはじめるのではないでしょうか。
私立学校の場合、小学生であっても、制服や制帽などに校章を付けることが義務付けられていることがあるため、すでにその頃から校章を身近に感じ、デザインの良し悪しを感じている人もいるかもしれません。
日本の校章デザインの特徴とは
日本には厚生労働省管轄の保育園を始め、文部科学省管轄である幼稚園や、小学校、中学校、高等学校、大学の他にも、文部科学省管轄外である専修学校や各種学校などがあります。
日本における学校数は、2019年5月現在において1,118校もあるそうです。
一般的に、文部科学省管轄内のほとんどの学校には校章が制定されています。
校章には、その学校の精神が詰まっており、生徒や学生が校章を身に着け、学校内の施設や所有物に記し、いつでも生徒や学生が見られる状態を作ることにより、学校の精神を生徒や学生に伝えています。
しかしながら、津田塾大学の場合には、「自ら学び、考え、行動せよ」という建学の精神を教師から学生へ、先輩から後輩へと自分たちの手で伝えていくという女子教育を行っていることから、校章を持っていません。
こうした学校もあります。
公立学校の場合、校章は学校ごとに制定されています。
しかし私立学校で幼稚園から大学まで一貫教育で行われている場合においては、創立者も同じであり、学校の精神も同じであることから、一つの校章で統一されている学校が多く見受けられます。
では、日本において一般的な校章デザインの特徴を挙げてみましょう。
1.学校の識別は中央に
幼稚園は「幼」、小学校は「小」、中学校は「中」、高等学校は「高」といった識別の文字を校章デザインの中央に配しているものが多いのが特徴です。
歴史のある学校の校章には、旧字体で篆書体(てんしょたい)のデザイン文字が描かれています。
篆書体は、中国の秦の時代から国家の官印にも使用されていた字体であり、現在においても印鑑の書体として使われています。
字体が威厳や理知といった重々しいイメージがあることから学校の校章デザインに使われるのでしょう。
2.「校訓校是」×「周囲の環境・気候風土」
学校の精神を言葉で表したものが「校訓校是」。
それを文字ではなく、その学校がある地域の動植物や景色などで表現しているのが特徴です。
秋田県由利本荘市の小学校の校章を見てみましょう。
由利本荘市にある鳥海山と学校の識別である「小」という文字の下に、市の頭文字である「Y」の文字を図案化したものがデザインされています。
一番下にある「Y」の文字が、鳥海山と小学校を下から支えているようなデザインです。
これは、未来に向けて発展してほしいという学校の願いが込められたデザインなのです。
3.由緒沿革
由緒沿革に基づいてデザインイメージされたものもあります。
主に学校の創立者などの学校と深い関わりのある人物の家紋がデザインの一部に使われることがあります。
また、旧制から新制の学校へ変革された際に、旧制時代の校章に似たイメージのデザインであることもあります。
例えば、岡山県浅口市にある高等学校の校章には、創立者の家紋である花菱がデザインされています。
4.欧米の紋章をイメージ
主にキリスト教系の私立学校においては、欧米の紋章をイメージしたデザインが多いのが特徴です。
文字での表現は控えめにして、聖書や十字架を表現したものや、校訓校是をモノに例えて表現されたものなどがあります。
この場合、学校の識別をせずに一貫して同じデザインの校章を使用しているか、または「中」や「高」といった文字の代わりに、配色を変えることで学校の識別をしている場合もあります。
日本以外にも校章はある?
校章は日本だけのものではありません。
海外の学校にも校章はあります。
もちろん、世界は広いので、校章という文化のない国もあります。
例えば、イタリアの中学校や高等学校には校章がありません。
そして、一部の私立学校を除いて制服もないのです。
そのため、日本のアニメを見ているイタリア人は日本の校章や制服にとても興味があるそうです。
世界の大学の校章デザインをご紹介!
では海外の学校の校章デザインにはどのようなデザインがあるのでしょうか。
今回は、一度は聞いたことがあるであろう世界の大学の校章デザインについてご紹介しましょう。
ソルボンヌ大学
2018年に旧パリ大学の第4大学と第6大学が合併し、ソルボンヌ大学となりました。
この大学の校章は、ソルボンヌ(Sorbonne)の頭文字「S」と、もともとパリ第4大学であった校舎をモチーフとしてデザインされています。
「S」の文字が2つに分かれているのは、合併前のそれぞれの大学を表しており、中央で交わることで、合併を表しているものと思われます。
フランスらしく繊細でウイットに富んだステキなデザインではないでしょうか。
ケンブリッジ大学
イギリスの総合大学としてオックスフォード大学と並ぶ世界トップクラスの優秀な大学として知られています。
日本の大学とは異なり、全ての学生はカレッジと呼ばれる学寮を選択し、在学中には1つのカレッジに所属することになります。
カレッジの数は31個もあり、それらをまとめて「ケンブリッジ大学」なのですが、他のカレッジと識別するために、それぞれのカレッジで校章は存在しています。
この大学の校章のモチーフとしてライオンが使われていますが、イギリスの王族の紋章に多く使用されていて、盾に描かれることで、城や館の主人をサポートする守護ビーストの意味もあるそうです。
ヨーロッパの国々でもいえることですが、大学の歴史をさかのぼってみると、王族や貴族と深い繋がりがあることから、彼らの紋章に由来したデザインが施されていることが多いと言えます。
ヘルシンキ大学
フィンランドにある大学の中では最古の大学で、最近では大学内の図書館のデザインが北欧らしいデザイン家具が多数置かれていることから観光地としても有名です。
この大学の校章デザインは、欧米でよく見かける紋章モチーフではなく、かなり斬新なデザインといえるのではないでしょうか。
大学の校章と言われなければ、どこかの企業のロゴに見間違えてしまうほど、校章のイメージとはかけ離れています。
日本と外国とはどれほど違う?校章デザインの相違点とは まとめ
現在の日本では少子化のため、学校が閉鎖されてしまうこともありますが、複数の学校が合併となり、新たに学校が誕生することもあります。
学校が誕生すれば、また新たなデザインの校章が必要になります。
学校によっては校章のデザインをデザイナーに依頼することなく、学内の教職員や卒業生などから公募となる場合もあるようです。
その時には海外の校章デザインも参考にして、生徒や学生だけではなく地域の人から愛される校章デザインを作ってみてはいかがでしょうか。