地方創生に、クリエイティブ産業の力を活用している自治体が多いのをご存知でしょうか。
デザインのコト。では、自治体や国から発行されている、こうしたクリエイティブ産業に関する資料を読み解き、分かりやすく紹介しています。
今回は、国土交通省 都市局 まちづくり推進課 官民連携推進室が発表した、「自治体等による民間まちづくり支援の取組み事例(2018年度版)」です。
官民一体となったまちづくりには、デザインやクリエイティブの力が欠かせません。
クリエイターだけではなく仕事を依頼したい方もぜひご一読ください。
※情報は2019年12月9日時点のものです。
目次
【愛媛県松山市】 賑わいを再生する都市デザイン
松山市では、松山市と民間企業、そして市内の大学が連携して、中心市街地の賑わいを再生するために「松山アーバンデザインセンター(UDCM)」を設立しました。
専門性をいかし、景観整備や社会実験、人事材育成などを行っています。
UDCMでは、回遊性向上のため社会実験として滞留拠点を設置し、周辺の歩行滞留者密度は整備前よりも3倍以上増加しました。
松山アーバンデザインセンター
「創る」「交わる」「学ぶ」「知る」の4つをミッションとして活動をしています。
空間デザインマネジメント・プログラムデザインなど、デザインやクリエイティブの力を活用したプロジェクトが多いのが特徴です。
プロジェクトは、『「松山城の自然・歴史と俳句文化が融合した現代の城下町」 アジア都市景観賞(2018)』を受賞するなど、多方面から評価を得ています。
またアーバンデザインスクールの開催など、人材育成にも力を入れています。
【岩手県大船渡市】市有地の地代減額分をエリアマネジメント活動に充当する仕組みを整備
大船渡市では、平成27年にまちづくり会社「株式会社キャッセン大船渡」を設立し、大和リースをエリアマネジメント・パートナーに迎えました。
東日本大震災の津波で被災し、拠点市街地としての復興が行われているエリアに対して、地代を減免する代わりに民間事業者がエリアマネジメント活動の資金を負担しています。
まちづくりの取り組みを「場づくり」「ファンづくり」「仕組みづくり」の3つに分け、ハード・ソフトの両面で官民連携による取り組みがすすめられています。
2017年10月には、日本都市計画家協会賞「日本まちづくり大賞」を受賞しました。
キャッセン大船渡
キャッセン大船渡では、商店街の運営だけではなく、景観まちづくりや認知度向上に関する取り組み、そしてエリアマネジメントを行っています。
キャッセンクリエイティブファーム
⑧街区は、創造性のある事業を行う場として位置づけられています。
ものづくり施設やワイナリーがあり、新しいモノやコトが創出される場所です。
大船渡では、復興のために新しいまちづくりを行いました。
まちのデザインだけではなく、タウンプロモーションやプレイスメイキングなど、多彩な取り組みにクリエイティブの力が活用されています。
【島根県江津市】地域の課題解決に繋がる起業環境を整備し、若者移住者を支援
島根県江津市では平成22年から企業誘致とともに、起業人材誘致に取り組んできました。
「創業しやすいまち」を実現するために、創業サポート環境を構築し、「ビジネスプラン・コンテスト」を開催。
起業件数は平成30年現在16件、雇用者は32人、そして平成29年の売上総見込みは約3億1千万円と、経済効果と雇用の創出に成功しました。
NPO法人てごねっと石見
「創業支援や人材育成を通じて、地域が元気になる“てご(お手伝い)”をする」ことを目標に立ち上げられたNPO団体です。
ビジネスプランコンテスト「Go-Con」の開催、小・中学生向けのキャリア教育など、地域を元気にするために多彩な取り組みを行っています。
積極的な取り組みは高い評価を得ており、2015年には地域再生大賞を受賞しています。
創業支援
創業のためには、多彩な知識や準備が必要になります。
江津市では多彩な分野のプロフェッショナルが、徹底した伴走型支援を行っています。
窓口や繋がりのサポートがあり安心です。
Go-Conはビジネスコンテストですが、コンテストの事前事後に勉強会を開催し、専門家によるアドバイスを受けてブラッシュアップできる機会が設けられています。
創業ノウハウを持たない方や知見がない方でも、アイデアを形にするサポート体制がしっかりと整っているのです。
実際にニューヨーク帰りのデザイナーを中心とした仲間が集まって、駅の近くに家具・空間デザインを手がける工房ができるなど、施策の効果があらわれています。
起業家だけではなく、独立開業を考えているクリエイターにとっても、注目したい支援といえます。
【宮崎県日向市】イベント間の総合調整のための協議会設立
日向市では持続可能なコンパクトシティ形成を目指して、中心市街地活性化に向けた事業を実施し、まちなかでイベントができる交流広場・野外ステージ・JR高架下スペースが整備されました。
賑わい創出を支援するために、市が事務局となる協議会を設立し、イベント間の総合調整を行っています。
イベントの開催が効率的になることで、開催数が増えより多くの方が日向市を訪れるとともに、地元の方も交流や勉強の機会を持つことができるようになります。
新しい日向市観光推進計画
日向市では平成28年に「新しい日向市観光推進計画」を発表しました。
「観光まちづくり」を目標に掲げ、官民が一体となって多彩な施策を実施しています。
「広域との連携強化やきめこまやかな情報発信が必要」とし、都市部等での積極的なプロモーションを行うなど、戦略的な情報発信やPR活動の強化に取り組んでいます。
日向市観光協会が主体となって、メディアの効果的な活用や多様な観光パンフレットの作成など、クリエイティブの力を活かした取り組みが多数。
デザイナーやクリエイターの活躍のフィールドが広がっています。
多彩な経営支援施設
日向市には、多彩な経営支援施設があり、ニーズに応じてさまざまなサポートを受けることができます。
ひゅうが創業支援夢プラザ
一般社団法人日向地区中小企業支援機構が運営する、「日向ひとものづくりセンター」内に設置されている創業支援インキュベーション施設です。
創業を考えている方や、創業後間もない方を対象として、オフィスを低額で貸し出しています。
共有区画には、ミニキッチンやミニ冷蔵庫を完備しています。
ひむか-Biz
日向市でがんばる中小企業や創業希望者を支援する産業支援施設です。
無料で相談・伴走型サポートを行っています。
金融相談会や情報発信力向上セミナーなど、経営に関する悩みに寄り添う取り組みが多数。
法人だけではなく個人事業主も対象なので、フリーランスのクリエイターの方も利用できるのは嬉しいポイントです。
官民一体のまちづくり支援とは?注目の4自治体の取り組みをご紹介 まとめ
官民が一体となって取り組むまちづくり。
施策をみていくと、クリエイティブの力が随所に活かされていることが分かりますね。
これらのプロジェクトを行てっている自治体では、クリエイティブの力を評価し、発揮できる環境がより整えられていくことでしょう。
クリエイターの集積がさらにすすむかもしれません。
まちづくりに興味をお持ちのクリエイターだけではなく、クリエイターをお探しの方もぜひ、注目してみてくださいね!