より良いデザインとは、見栄えや権威性ではなく、ユーザーが使いやすさや良さを感じるものだと言えます。
そのために持っておきたいのが「ユーザー目線」です。
しかし、そもそもユーザー目線とはどういうものなのでしょうか?
また、ユーザー目線を持ち続けるためにはどのようなことに気をつければいいのでしょうか。
目次
そもそもユーザー目線とは?
皆さんはどのようなことを「ユーザー目線」と呼びますか?
「ユーザーの声をそのまま反映したもの」「お金のかからないもの」「ユーザーの気持ちに寄り添っているもの」など、答えはさまざまでしょう。
しかし、みなさんにとっての「ユーザー」は一人ではありません。
全員の希望を叶えることは不可能と言えるでしょう。
また無料だからといってユーザーが喜ぶわけではありません。
有償でも愛され続けるサービスはごまんとあります。
想像以上の価値を提供できるかどうか
では改めてユーザー目線について考えてみましょう。
それは使いやすさだけでなく、満足感や想像していた以上の価値に出会えたと感じられるかどうかではないでしょうか。
どんな人でも、何かしらの商品やサービスを利用するときには、それによって得られる価値を想像するものです。
それはハサミを使う人は切れやすさ、ペンを使う人は書きやすさなど、物によってさまざまです。
共通しているのは、実際に使った後に、事前に期待していた以上の価値が得られなければ、人は「がっかりする」ということです。
逆に、期待以上の価値が得られれば、人は「満足」し、また使いたいと思うようになります。
このように、ユーザーが期待する価値を理解し、それ以上のものを提供しようとすることがユーザー目線と言えるのではないでしょうか。
「ユーザー目線=媚びること・無料にすること」ではない
こうした視点に立つと、ユーザー目線が媚びることや、安易に無料にすることではないということがおわかりいただけると思います。
ユーザーの声に耳を傾けることはたしかに大切です。
しかし、それにこびたり無料にすることで、その他のユーザーの期待を裏切ってしまっては意味がありません。
その点を理解した上で、改めてみなさんがユーザー目線に立てているか、今一度考えてみましょう。
ユーザー目線を持ち続けるための3つの心得
「ユーザーが期待する価値を理解し、それ以上のものを提供しようとすることがユーザー目線」とお伝えしましたが、その視点を持ち続けるのは大変なことです。
なぜならユーザー目線は人によって異なりますし、形がないものだからです。
しかし、デザインにおいてユーザー目線は理解すべき重要な要素です。
ここからは、ユーザー目線を持ち続けるための心得についてご紹介します。
明確な目標とターゲット設定
まず大切なのは、目標やターゲットを設定することです。
目標とはビジョンやコンバージョンとも言いかえることができます。
目標を決めることはターゲットを決めることにつながります。
同じ商品でも、何を求めているのかは年齢や性別、用途などによって異なるからです。
どんなボトムスを作る?
例えば女性向けのボトムスについて考えてみましょう。
どんなシーンで履くかによってユーザーが満足する基準は異なります。
ビジネスシーンで使用するものを求めている人にとっては、見栄えだけでなく履きやすさや動きやすさ、また洗濯後の縮みやシワも気になるでしょう。
一方、自宅で使用するものを想定している場合、ラフに履けるかどうか、また保温性や撥水性なども気になるかもしれません。
なにかの作業で使用したいのであれば、汚れにくさや生地の質なども重要視するでしょう。
このように「女性向けのボトムス」ひとつとっても多くのユーザーが想定できます。
目標がなければチームは動けない
また目標設定は、企業側にとっても大切です。
なぜなら、どこに向かって進めばいいのかメンバーが困ってしまうからです。
先程のボトムスを例に挙げましょう。
上司から「女性向けのかっこいいボトムスを作れ」と言われたとします。
皆さんはどんなものを「女性向けのかっこいいボトムス」だと思いますか?
また、ここでいう「女性」とはどんな体格の、何歳の女性なのでしょうか。
このように、目標やターゲットがアバウトだと、メンバーは動くことができません。
これはデザイナーも同じことです。
目標やターゲットによって、響くデザインは異なります。
それを明確にできなければ、ユーザー目線を持つことは難しいと言えるでしょう。
自分もユーザーであり続ける
明確な目標やターゲットが決まったら、ぜひ皆さんに行ってほしいことがあります。
それは、みなさん自身もユーザーであり続けることです。
答えを持っているのはユーザーである
これは性別や趣向に関わらず、ぜひ行っていただきたいことの一つです。
自分自身がユーザーになることで、その気持ちや期待することが初めて見えてきます。
「年齢や性別が違うから」「あくまで仕事のことだから」と、ユーザーになりきれずにいると、彼ら彼女らに響くデザインを考案するのは難しくなります。
なぜなら、答えを持っているのはユーザーだからです。
実際に下着メーカーでは、女性向けの衣類開発に男性も携わっており、彼らがブラを付けることもあるそうです。
実際に身につけなければ、着心地はわかりません。
また、異性だからこそわかることもあるでしょう。
新しい発見は、こうしたミスマッチから生まれることが多いものです。
皆さんもデザイン開発に関わるのであれば、ぜひユーザーになってみてください。
ユーザーが求めているものが見えてくるだけでなく、新しい視点も手に入れることができるはずです。
ユーザー=神様ではないことを理解する
以前「お客様は神様です」という言葉が流行し、それが当たり前に使われる時代がありました。
確かにお客様はとても大切な存在であり、彼ら彼女らを尊重することがより良い商品やサービスの開発につながることはいうまでもありません。
だからといって、すべての要求を飲むことがユーザーの満足につながるのでしょうか。
数多のユーザーの声から本当のニーズを探る
さまざまな要求をする存在として、皆さんの身近にいるのが小さな子どもです。
子どもは大人に対してさまざまな要求をしてきます。
しかし、「夜だけどお菓子が食べたい」「いつまでも遊んでいたい」など、こうした要求をすべて飲むことは、彼ら彼女らの幸せには決してつながりません。
ユーザー目線にも同じことが言えます。
大切なのは「要求を受け入れる」ことではなく、「期待以上の満足を提供すること」です。
ここでいう「期待」は多くの場合、ユーザーの言葉の裏に隠れているものです。
例えば「夜だけどお菓子が食べたい」という言葉の裏には、「夜ご飯を十分食べられなかった」「お腹を満たすような夜ご飯の内容じゃなかった」「夜ご飯を食べる時間が早すぎた」などの原因が隠れています。
そちらを解決することが、長い目で見ると子どもの満足を満たすことにつながります。
このように、何事も鵜呑みにせずに、まずは「この人は何を期待していたんだろう」という視点に立ってみましょう。
するとユーザーの本当の期待が見えてくるはずです。
デザインのために必要なユーザー目線とは?持ち続けるための3つの心得 まとめ
デザインに必要なユーザー目線を持ち続けることは、決してカンタンなことではありません。
だからこそ今回ご紹介した心得を胸に、デザイン開発にあたってみてください。
本当に行うべきことがきっと見えてくるはずです。