デザインのコト。では、国や自治体そして民間が発表した資料を基に、国や自治体のクリエイターやクリエイティブ産業に対する支援や取り組みをシリーズでご紹介します。
今回は、日経クロストレンドが発表している「自治体マーケティング力ランキング」の、定住人口増加率が高い自治体の特徴や取り組みをご紹介します。
地域おこし・地域活性化が重視される中で、定住人口増加率が高い自治体はどんな取り組みをしていて、クリエイティブの力がどのように活用されているのでしょうか。
クリエイティブ産業だけではなく、地域創生に興味をお持ちの方必読です。
※情報は2019年12月25日時点のものです。
目次
「自治体マーケティング力ランキング」とは
日経クロストレンドでは、全国1,741市区町村に対し、定住人口・観光人口・関係人口の3つの数値から独自に算出した「自治体マーケティング力ランキング」を発表しています。
算出方法
「定住人口」は、2016年1月から2019年1月の住民基本台帳に基づいて、3年間の増減率を算出。
「観光人口」は、各都道府県の2014年から2017年の観光統計を参考にし、市町村別の観光いりこみ客数を抽出のうえで増加率を算出しています。
「関係人口」は、移住スカウトサービス「SMOUT」を運営しているカヤックlivingの「ネット関係人口スコア」でのデータ提供を基にしています。
さらに自治体の公式SNSのフォロワー数や、SMOUT上でのコミュニケーション数、そして自治体の人口バランスを加味。
3つの人口を定住人口増加率50%、観光人口増加率10%、ネット関係人口スコア40%の比率で合算しました。
関係人口は、定住人口と観光人口の間で、その地域や地域の方々と多様に関わる人の数を指します。
定住人口増加率ベスト5
今回発表されたランキングの結果はご覧のとおりです。
1位:北海道占冠村(しむかっぷ) 21.4%
2位:沖縄県与那国町 15.2%
3位:東京都中央区 13.6%
4位:北海道赤井川村 9.7%
5位:東京都千代田区 8.6%
北海道占冠村の取り組みについては以下記事で取り上げておりますので、今回は特に2位、4位、5位の自治体の取り組みについてご紹介します。

2位:沖縄県与那国町
与那国町の平均人口は、2016年に1,489人を記録し、その翌年に1,686人に増加。
2019年には1,704人にまで回復しました。
この大幅な増加は、陸上自衛隊160人の配備によるものです。
与那国町人口ビジョン及び総合戦略策定等報告書
平成28年に発表された「与那国町人口ビジョン及び総合戦略策定等報告書(概要版)」では、2021年の目標人口を1,800人としています。
そのために、「住民主体の自治・島おこし・まちづくり」を後押しするだけではなく、「国境交流を通じた地域活性化と人づくり」をすすめ、IT/情報通信基盤の整備をしていきます。
また、中学卒業時に離島した島民が仕事の創出によりUターンしたり、定住人口が増えるように、観光や伝統的ものづくりなどの産業で仕事を創出していきます。
「与那国町らしい、小さな仕事と小さな雇用を創出する 」ために、地に足の着いた施策を実施。
そのために、与那国牛のブランド化や、ダイビングだけではなく通年型観光を可能にする自然環境や伝統文化の活用など、多彩な施策が実行されています。
これらの取り組みが、着実に結果となっているのです。
ブランディングや観光情報の発信など、与那国町ではクリエイティブの力を積極的に活用し多彩な取り組みを行っています。
雄大な自然に触れながら、仕事に取り組める環境に魅力を感じて、移住を考えるクリエイターもいるかもしれませんね。
参考:八重山毎日新聞「与那国町人口1500人割り込む 統計史上初のマイナス」
4位:北海道赤井川村
北海道赤井川村は、農業や観光業が盛んで、キロロスキーリゾートに属するキロロスノーワールドがあることで知られています。
2019年現在総人口は1,205人で、うち外国人は111人です。
キロロスキーリゾートは、冬だけではなく夏のアクティビティも豊富で、ラグジュアリーホテルが集結する北海道でも有数の観光地です。
そのため、観光業に携わる方の転入が人口の増加を押しあげています。
赤井川村の取り組み
2016年に策定された「赤井川村創生総合戦略」では、赤井川村の取り組みが紹介されています。
赤井川村はスノーリゾートで知られており、冬季には全国各地からたくさんの若者が集まります。
冬季に管内に滞在・就業している若者を、夏季に農業などとマッチングすることで、通年雇用化を目指しています。
通年雇用化が実現することで定住化に繋がり、人口が増えていくのです。
また外国人が多く滞在する環境をいかし、グローバル人材を育成することで、地域経済を活性化させ雇用の創出を目指します。
さらに、基幹産業である農林水産業の持続的な発展のため、商品開発や情報配信に力を入れ、さらなる高付加価値化やブランド化を推進していきます。
目標のひとつである「国際観光リゾートエリアの形成」を実現するためには、ブランディングやさらなる情報配信が必要不可欠です。
クリエイティブの力を発揮できるフィールドが広がっており、ウインタースポーツや自然が好きなクリエイターにとって、嬉しい環境が整っています。
5位:東京都千代田区
皇居を擁しており、都心でありながら豊かな自然に触れられる東京都千代田区。
さらに秋葉原などのカルチャーの発信地でもあります。
千代田区では、平成11年に過去最低の39,264人にまで人口が減少し、人口回復を主要政策に掲げてきました。
その結果平成29年には、36年ぶりに人口が6万人を超えて、60,297人になりました。
都心回帰の傾向は続いており、アクセスが便利で住環境が良い千代田区は、今後も定住人口が増加していくと予測されています。
千代田区の取り組み
千代田区が定住人口を増やすために軸として行ったのが、住環境の整備や子育て支援施策です。
特に子育て支援施策は23区の中でも群を抜いており、2018年までの過去10年間で、なんと7回もの「待機児童ゼロ」を達成しています。
千代田区では、アーティストが主導・運営している文化芸術センター「アーツ千代田3331(さんさんさんいち)」など、クリエイター・アーティストに嬉しい施設やイベントがたくさん見つかります。
また、千代田区は国内外に知られる企業の本社が集結しているエリアです。
国内外で活躍しているクリエイターやアーティスト、デザイナーも集積しており、新しいクリエイターとの出会いを求める方は千代田区に注目です!
参考書籍:日経BP「最新マーケティングの教科書2020 BY日経クロストレンド」
定住人口増加率が高い自治体のクリエイティブな取り組みについて調べてみた【2020年】 まとめ
定住人口増加率の高い地域は、地域ぐるみで人口減少の問題に向き合い、地に足の着いた施策を行ってきた地域が多くあります。
また、これらの取り組みの一端をクリエイティブの力が担っている例もたくさんみられました。
その地域ならではの魅力を発信したり、デザインの力によって付加価値をつけようとする取り組みは、今後もますます増えていくことでしょう。
クリエイティブな仕事をしたい方も、クリエイティブの力を活用したい方も、こうした自治体の取り組みに注目してみてください。
素敵な出会いがあるかもしれません!