グラフィックデザインという言葉は、非デザイナーであってもご存知の方が多いことでしょう。
しかし、エディトリアルデザインについてはいかがでしょうか。
今回は、エディトリアルデザインとは何か、またグラフィックデザインとの違いについて、また両デザインのデザイナーについてご紹介します。
目次
エディトリアルデザインとは?
「エディトリアル(editorial)」とは、「編集」という意味があり、主に新聞や雑誌などの紙媒体について、ページ数が多いものをまとめる編集作業のことをいいます。
またデザインは「設計する」という意味も持つ単語です。
そのためエディトリアルデザインとは「文章や絵、図、写真を紙面内に整理し配列することで、読者にとってわかりやすく美しい紙面を設計すること」といえるのではないでしょうか。
また読者の目線や与える印象を考えて、より効率的で効果的な紙面を編集し、デザインすることともいえるでしょう。
どのようなものを、どのような視点でデザインしているのか
エディトリアルデザインは新聞や雑誌、書籍、マンガ、カタログ、フリーペーパー、パンフレットなどのページ数が多い紙媒体をターゲットとしたデザインです。
今回は新聞とカタログを例として、エディトリアルデザイナーがどのような視点でデザインしているのかをご紹介しましょう。
新聞
政治や経済、カルチャーなどの幅広い情報を読者にわかりやすく伝えるデザインが施されています。
新聞の紙面構成でみると、朝刊の場合にはスクープ面や社会面、国際面、テレビ面など約30面で構成されており、多い時には40ページにもわたる時があるそうです。
朝刊全体で200~300のニュースが掲載されているため、文章校正とともに、写真やイラストなどを効果的に使い、読者にわかりやすく伝わるレイアウトが必要となります。
カタログ
商品や展示物の情報を読者にいち早く理解してもらうだけではなく、商品価値や企業ブランド力を向上させるためのデザインを施す必要があります。
カタログの見やすさにより、商品の売上が左右されてしまうこともあり得るからです。
カタログのレイアウトだけではなく、読者が手に取った時の印象も大切です。
そのため、紙質やサイズ、また綴じ方についても、会社のブランディングにあったデザインが必要となります。
エディトリアルデザイナーに求められるスキル
エディトリアルデザインを行うデザイナーのことを「エディトリアルデザイナー」と言います。
エディトリアルデザイナーに求められるのは、読者にとって魅力的なエディトリアルデザインを作ることです。
そのため、書籍などの出版物のデザインに関する知識だけではなく、文章校正やレイアウトのセンスも問われます。
また、紙の種類や製本方法、印刷方法などの知識も必要です。
なお、エディトリアルデザインを行うには、パソコンが不可欠です。
IllustoratorやPhotoshopだけではなく、In Designというページレイアウトソフトを使用することもあります。
日本で有名なエディトリアルデザイナーは?
テレビなどのメディアを通じて、有名なグラフィックデザイナーが紹介されることはありますが、エディトリアルデザイナーはそれほどスポットライトが当たりにくい存在です。
エディトリアルデザイナーと聞いて、思い浮かぶ人がいないという人も多いかもしれません。
そこで今回は、エディトリアルデザイナーの堀内誠一氏をご紹介します。
彼は女性誌にビジュアル革命をもたらした人物です。
彼が雑誌を手掛ける前までは、文章ばかりの雑誌がほとんどでした。
しかし、文章ではなく、写真やイラストを多く使ったビジュアル中心の雑誌に変えたのが堀内誠一氏なのです。
女性誌の『anan(アンアン)』や『Olive(オリーブ)』をはじめ、男性誌の『BRUTUS(ブルータス)』や『POPEYE(ポパイ)』などのエディトリアルデザイナーでした。
まだIllustratorがない時代にもかかわらず、雑誌のタイトルロゴを自ら手書きで制作したり、雑誌に使う写真が少ない時には、自らイラストを描くこともあったそうです。
グラフィックデザインとは?
続いてグラフィックデザインについて見ていきましょう。
エディトリアルデザインよりは、グラフィックデザインという言葉の方が馴染みがあるのではないでしょうか。
「グラフィック(graphic)」とは出版や広告、映像などの媒体・コンテンツにおける視覚表現のことをいいます。
そのため、「二次元である平面上に表示される文字や画像、色彩などの素材を効果的に使用されているデザイン」が、グラフィックデザインといえます。
具体的には、広告や雑誌の表紙、ロゴを含めた視覚表現全般のデザインです。
どのようなものを、どのような視点でデザインしているのか
ポスターやチラシ、リーフレット、パンフレット、カタログ、新聞・雑誌広告の他に、ロゴや商品パッケージ、看板などの広告や印刷物のデザインです。
また、最近ではそれらだけではなく、ゲームの世界観にマッチしたキャラクターや背景などのデザインも含まれるようになりました。
このようにグラフィックデザインは広告系とゲーム系の2種類に分けられますが、それぞれについてどのような視点でデザインをしているのかをご紹介していきましょう。
広告系デザイン
主に商品の宣伝や販売促進のためのデザインであるため、取引先が要望する企画やコンセプトに対応するだけではなく、その商品のターゲット層にマッチするデザインを考えることが必要です。
ゲーム系デザイン
ゲームの世界観に合うキャラクターや背景、アイテムなどの、ゲームに存在する全てのデザインが必要です。
そのため、ゲームのコンセプトを十分に理解したうえで、リアルなグラフィック効果と演出で、ゲームユーザーを魅了するような世界観を作る必要があります。
ゲーム系のデザインの場合には、作業工程が多いため、制作段階で「キャラクター」、「背景」、「モーション」、「エフェクト」と役割を分業化し、チームで制作したものを合わせて一つの作品としています。
グラフィックデザイナーに求められるスキル
グラフィックデザインを行うデザイナーのことを「グラフィックデザイナー」と言います。
グラフィックデザイナーの場合、大まかに分けると以下の3つのスキルが必要です。
デザインスキル
取引先からはトレンドに沿ったデザインが求められます。そのためには常にアンテナを張り、最新トレンドを収集することが求められます。
またデザイン制作において、デザインの構成や配置などは必要不可欠です。
そのためにもデッサンやスケッチを重ね、基礎画力を付けることが大切です。
また色彩の理論を把握したうえで、トレンドに合わせた色彩センスが必要です。
アプリケーションスキル
グラフィックデザインを行う時にもパソコンが不可欠です。
IllustratorやPhotoshop、In Designの他に、ゲームなどの3Dグラフィックを制作する時に使用するソフト『Maya』のスキルも必要となります。
コミュニケーションスキル
取引先が要望する企画やコンセプトに対応するためには、取引先とのコミュニケーションが必要です。
良い作品を作るためには何度も作品の作り直しを依頼されることもあるでしょう。
取引先と上手くコミュニケーションを取り、信頼関係を得ることで、作品の出来も左右されることがあるかもしれません。
エディトリアルデザインとグラフィックデザインの違い
まずはデザイン自体の違いについて考えてみましょう。
エディトリアルデザインは紙媒体に特化したデザインであるのに対して、グラフィックデザインは、紙媒体の印刷物だけではなく、広告全般やゲームなどの多岐にわたる視覚表現デザインのことをいいます。
したがって、グラフィックデザインの一部がエディトリアルデザインと言えます。
次にデザイナーという視点で、両者を比較してみましょう。
グラフィックデザインを制作するグラフィックデザイナーは、取引先が要望するデザインを提案し制作しており、「デザイン」に特化した仕事をしています。
しかしながら、エディトリアルデザイナーの場合には、デザインだけではなく、編集するという仕事も含まれるのです。
兼務するデザイナーもいる?
グラフィックデザイナーとして経験を重ねていくうちに、編集スタッフの構成案がどのようなものであるのか、またグラフィックデザイン以外の分野においても知識を得る機会も多くなるでしょう。
そのため、紙媒体の広告デザインや装丁、印刷などの知識が高いグラフィックデザイナーの場合には、エディトリアルデザイナーと兼務している場合もあり、両者の境界はあいまいのようです。
エディトリアルデザインとグラフィックデザインの違い まとめ
時代とともに紙媒体のデザインは少なくなり、Web媒体のデザインが多くなる傾向にあります。
しかし紙媒体が残っている以上、エディトリアルデザインは存在し続けるのです。
日本にはこれまで多くのエディトリアルデザイナーやグラフィックデザイナーがいました。
今後も日本の雑誌界に革命をもたらした堀内誠一氏のような斬新なデザイナーが、今後においても輩出されることを願ってやみません。