どんなに時代が変わっても、何年かに一度ブームが訪れる和のデザイン。
ブームの度に日本文化が見直され、さらに新しいデザインに生まれ変わるという事象も起こっています。
今回は、古来から多くの日本人に愛されている「組子」という技術について、その歴史や人々を魅了する理由などについてご紹介します。
目次
組子とは?
組子は日本古来から木造建築などに用いられてきた技術のひとつです。
小さな木片同士を組み合わせることで、直線だけでなく曲線などを再現し、多彩な幾何学模様を生み出すことができます。
一般的に欄間やふすまの建具に施されることが多く、日本を代表する伝統文化のひとつとして知られています。
組子の特徴は?
組子の大きな特徴は、釘などを使わずに組み付けること。
のこぎりやカンナなどを使い、小さな木片に溝や穴などを作り、ひとつひとつ手作業で組み付けていきます。
加工や組み付けの技術もさることながら、技術者には木の種類や部位に合わせた方法を採用することや、より良質な材料を見極めることも求められます。
これは、わずか数ミリでもずれてしまうと、うまく組み付けることができないためです。
ズレの原因はさまざま。
技術的な要因もあれば、素材の木のクセや性質が大きく関わることも少なくありません。
そのため、これらを習得するには最低でも10年はかかると言われています。
平安貴族も愛した?組子の遥かな歴史
組子の歴史は古く、飛鳥時代に建てられた法隆寺にもその技術が採用されているそうです。
他にも組子は、平安時代末期の貴族たちの空間にも華を添えていました。
一気に需要が高まったのは江戸時代からと言われています。
この頃には独自の美しさを打ち出そうと、職人がその技を競い合い、現代にも伝わる数多くの紋様が生まれました。
現代に伝わる紋様の多くは、こうして誕生したものだといいます。
需要減少により技術者が減少
一時は大きな盛り上がりを見せた組子ですが、技術の伝承に時間がかかること、また和室の需要の減少などに伴い、担い手の数は年々少なくなっているのが現状です。
こうした状況に歯止めをかけようと、住まいのさまざまな場所に組子を取り入れる動きが出てきています。
今ではホテルの和室のふすま部分や天井部分、またインテリアに組子を取り入れた建築物が多くみられるようになりました。
組子が人々を魅了する2つの理由
今では日本人だけでなく、海外からの観光客からも評価されている組子の技術力とデザイン。
悠久の時を経て多くの人に愛される理由を3つご紹介します。
1.釘などを使わずに仕上げる技術力
貴族や民衆に愛される理由のひとつは、一朝一夕では身につかない高い技術力にあります。
わずか0.1mmのズレも許さない組み付けの技術はもちろん、溝の深さやホゾ、切込みの加工などは、職人技と呼ぶにふさわしい非常に細かな作業が必要とされます。
近年はある程度機械化が進んでいるそうですが、ミリ単位で切り込みを入れたり加工したりといった必要があるのはこれまでと同じ。
材料が切れるか切れないかの微妙な厚みに仕上げていく作業や、角度をつけるための微妙な加工などがなければ組子は成り立ちません。
見た目だけでなく、こうした技術の素晴らしさに感動し、組子を購入する人もいらっしゃるようです。
2.多彩なデザインパターン
組子の美しさの秘訣となっているのが、その多彩なデザインです。
紋様の種類は200以上あると言われており、これらを組み合わせることで用途や使う人の好みに合った多種多様な組子を作ることができます。
その中でも基本となるのが「菱組子」と「格子組子」の2つのパターンです。
菱組子はその名の通り、ひし形を基本としたパターンで、組子のデザインの基礎とも言えるデザインです。
もうひとつの「格子組子」は規則正しく格子状に縦横が組み付けられたデザインで、これら2つを見たことのある人は多いかもしれません。
これらを基本とし、空いた部分に木片をはめ込んでいくことで、多様なデザインを作り上げていくのです。
どのように組み付けていくかは、まさに職人の技の見せ所であると同時に、人々を魅了する部分だと言えます。
和室だけじゃない!組子が採用されているデザイン事例
ここからは、実際に組子が使われた建築物やインテリアの事例についてご紹介しましょう。
キューブ型行灯
大川組子で取り扱われている、キューブ型行灯です。
全体の特有なデザインもさることながら、光に照らされた組子が形作る美しい印影が、部屋の雰囲気を美しく彩るアイテムとなっています。
さまざまなパネルを組み合わせたデザイン
行灯のようにひとつのパネルで表現するものもあれば、このように複数のパネルを組み合わせてさまざまなパターンの組子デザインを楽しめるものもあります。
ホテルや飲食店などに使用されていることが多く、素敵な食事の雰囲気を高めてくれるでしょう。
カラフルな組子
組子は木そのものの色合いを採用しているものが多いですが、なかにはこのようにカラフルなものも見られます。
華やかな様は、祝い事や縁起の良い場などでも使いやすいですね。
かわいさをプラスした組子
組子は必ず全面に施さねばならないわけではありません。
このように一部に施すことで、より手軽に生活の中に組子を取り入れることも可能です。
ちなみにこの商品は、照明のほか小物入れとしても使用できるとのこと。
身近なアイテムに組子を施すことで、その良さが多くの人に伝わるアイテムとなっています。
組子とは?特徴や愛される理由、デザイン事例をご紹介 まとめ
かつては日本の木造建築に欠かせない技術だった組子ですが、今では現代のさまざまな技術やデザインと融合し、さまざまな形で私たちにその姿を見せてくれています。
組子の奥深く、また繊細なデザインを、ぜひ皆さんの商品にも取り込んでみてはいかがでしょうか。