ロゴ制作では、同じ業界の他社のデザインを知っておく必要があります。
なぜなら、同じ業界のデザイン傾向を知ることで、以下のようなメリットがあるからです。
- 業界の傾向をデザインに取り入れることができ、ロゴを見た人にどんな業界の会社なのか認識してもらいやすい。
- 傾向を踏まえつつ、あえて異なるデザインにすることで、他社との差別化をはかれる。
今回は、同じ業界のロゴデザインを集めて、分析し特徴を紹介します。
ロゴを制作するときの参考になりますので、特徴の捉え方を知ってもらえればと良いなと思います。
今回紹介する業界は、以下の5つを選びました。
- 銀行
- 化粧品
- 外食チェーン
- シューズブランド
- 住宅系
では、それぞれのロゴを紹介しつつ、業界ごとに特徴を分析した内容をお伝えします。
目次
①銀行
みずほ銀行
赤い円弧のデザインは、今まさに太陽が昇ろうとする地平線をイメージしたもので、社員一人ひとりの強い意志と情熱を表しているそうです。
また、ブランドカラーの青・赤は
【青】信頼・誠実・ワールドスケール・クオリティ
【赤】お客さまとのリレーションシップ・ヒューマニティ・情熱
を意味しています。
参考:みずほFGブランドロゴ
三菱UFJ銀行
シンボルマークの円形を重ね合わせることで、グループが目指す『グループの総力を結集して生み出す新しい総合金融サービス』と『お客さまと一体感のある親しみやすいサービス』を表しています。
円それぞれは
【中央の円】新しいグループ
【外側の交差する円】国内外の広がりを意味し「あらゆる場所で、あらゆる分野で最高水準のサービスをご提供する『世界屈指の総合金融グループ』を創造していく」という意志
を意味しています。
三井住友銀行
上昇カーブを描くシンボルマークは『ライジングマーク』と呼ばています。
価値あるサービス、先進的・革新的なサービスにより、お客さま・株主・社会と共に発展していくという願いが込められています。
ブランドカラーの緑は、
【フレッシュグリーン(シンボルマーク)】若々しさ、知性、やさしさ
【トラッドグリーン(ロゴマーク背景)】伝統、信頼、安定感
を表しています。
①銀行 ロゴの特徴
三大メガバンクと呼ばれる3社。
それぞれのロゴの特徴を元に、銀行のロゴはどのような特徴があるのかを、以下のようにまとめました。
- 抽象的なシンボルマーク
- 金融という特に信頼されないといけない業界なため、ブランドカラーも信頼度を高める色
- 『発展』『広がり』『上昇』など、未来をイメージしたデザイン
- 『信頼』『真面目』などの基本的なイメージを入れつつ、銀行ごとの独自性も出ている
②化粧品
資生堂
『資生堂』という社名は、中国の古典『易経』の一節を元にしているそう。
それまで明朝体活字で表記してきた社名を、資生堂の企業像にふさわしい特定の書体に変えようと、現在のロゴになりました。
ロゴの書体は複数の中国古典に書かれていた書体を参考にしています。
花王
月のマークは、創業者である長瀬富郎が、当時取り扱っていた輸入鉛筆のマークからヒントを得て考案されました。
左向きの月は、これから満月に向かう上弦(じょうげん)の月で、縁起が良いからという理由で、この向きだそうです。
また、月の顔は、男性→女性→子供(現在のシンボルマーク)と変化しています。
消費者に親しみと信頼感を与えられるよう、子供の顔になり、そのタイミングでカラーもオレンジに。
しかし、社名変更に合わせて、再度ブランドカラーはオレンジからグリーンになりました。
グリーンを選定した理由は、
- 当時の新スローガン「清潔で美しく、健やかな毎日をめざして」とのマッチングを考慮したこと
- オレンジからグリーンにすることで、イメージに新しさを出せること
です。
参考:花王|ロゴマークの変遷
コーセー
コンパクトが2つ並んでいるように見えるロゴ。
この2つのマークの間にできた空間が社名の頭文字「K」を表しています。
全体的に、落ち着いていて、上品な印象を与えるデザインです。
ロレアルパリ
シンプルなサンセリフ体のロゴ。
全体的に、洗練された印象を受け、程よい高級感のある細さのフォントです。
Oの文字が他の文字より少し大きいので、アクセントになっています。
化粧品会社 ロゴの特徴
- 高級感・洗練された印象を出すには、太すぎず細めの書体が良い
- 日用品など幅広い商品を扱っている会社は、親しみのある(丸みのある)書体、カラーを使用し、常に家に置いておけるような身近な印象が合う
③外食チェーン
マクドナルド
マクドナルドを象徴する「M」のマーク。
元は、屋根の上につけていたアーチの形からきていると言われています。
当時は「ゴールデンアーチ」と呼ばれ、人気だったそう。
明るさ・賑やかさを与える黄色と赤でインパクトを出し、誰でも利用できる気軽さ・親しみやすさがロゴから伝わってきます。
世界中で愛されている理由が、ロゴからも分かりますね。
参考:マクドナルドのロゴ
吉野家
吉野家のイニシャル「Y」が牛になっているシンボルマーク。
牛の頭の上にある7つの点は、湯気を表しています。
周りのしめ縄は「美味しさは横綱級」という意味が込められているそう。
カラーのオレンジは、初代社長がアメリカ視察中に見たコーヒーショップ『ハワード・ジョンソン』の看板と屋根のカラーが気に入ったからという理由。
ですが、オレンジの光は料理を美味しく見せる効果があるので、飲食店のカラーにはぴったりです。
参考:吉野家のロゴ
外食チェーン店 ロゴの特徴
- 誰でも気軽に入れる店という特徴から、親しみやすさのあるデザイン
- 線は細すぎず、どちらかというと太め。
- カジュアルな印象を受けるデザイン
- 寒色より暖色を使用している店が多い(暖色は、料理を美味しく見せる・家族団らんのイメージを与えるため)
④シューズブランド
ナイキ
ナイキのシンボルマークは、「スウッシュ (Swoosh) 」という名前があります。
「スウッシュ (Swoosh) 」とは、「ビューンと音をさせる」という意味。
マークも、躍動感・スピード感を表したデザインで、シューズブランドのイメージをよく表していますね。
マークのモチーフは、NIKE社名のモデルにもなった「勝利の女神ニケ」の翼です。
参考:ナイキの由来
アディダス
3本線で有名なアディダスのロゴ。
当時の革製スポーツシューズは、履いているうちに中足部が伸びてしまったため、3つのバンドで補強しました。
その機能をロゴに取り入れてから、アディダスの3本線のイメージは広がっていったとされています。
ロゴタイプ(文字)は、太く・丸くカジュアルなフォントで、スポーツブランドとしてのイメージと合ったフォントを使用しています。
参考:マイナビニュース
コンバース
コンバースと言えば星マークですよね。
このマークは、バスケットボール専用シューズとして発売され、爆発的な人気を誇る「All Star」のアンクルパッチ(くるぶしを保護する円形のパッチ)に記された星マークが元になっています。
All Starがバスケットボールシューズとしての役目を終えてからも、星マークはコンバースの別のシューズや、自社のロゴにも少し形を変えながら使用されています。
ロゴタイプは、フォントの角を一部丸くし、親しみのあるデザインです。
アディダス同様、太めでカジュアルな印象を受けます。
アシックス
アシックスの頭文字「a」をモチーフに、スポーツのスピード感・躍動感を表したシンボルマーク。
このマークは、「宇宙」に浮かぶ惑星のようなイメージを与え、「21世紀に広がる無限の可能性」という意味を込めているそうです。
また、1つの基幹事業を軸に周辺事業も関連して発展する現象を表す経済用語である「スパイラル(渦巻き、らせん)」も表現しています。
アシックスのロゴタイプも、太めでカーブが丸く、親しみやすさ・カジュアルな印象を受けるデザインです。
シューズブランド ロゴの特徴
- 躍動感・スピード感といったスポーツをイメージできる要素をシンボルマークに入れている
- ロゴタイプは、太め・角丸が多く、カジュアルな印象を与えつつ、強さを感じられる
- ロゴタイプでイタリック体(斜体)を使用すると、スピード感が増す
⑤住宅系
積水ハウス
積水ハウスのシンボルマークは2つの形で構成されており、それぞれ以下のような意味が込められています。
【右のマーク(赤)】家・人・生活
【左のマーク(青)】空・希望・真理
また、左右のマークを繋ぐ中央右上がりの直線には「企業の限りない飛躍」という願いがあります。
カラーは、
【赤】情熱、躍動、飛躍、親しみやすさ
【青】未来、希望、知性、理性
を表しています。
全体的に、力強く発展していく会社のイメージに合ったデザインにしているそうです。
大和ハウス
大和ハウスのシンボルマークはそれぞれしっかりとした意味が込められています。
【シンボルマークのハート】顧客との絆・グループの連帯感が包こむ優しさ
【中心の円】グループの原点・和をイメージ
【メビウスの輪を想起させるデザイン】絶えることのないグループの行動、無限に続く成長・発展性
経営ビジョンの「お客さま一人ひとりとの絆を大切にし、生涯に渡って喜びを分かち合えるパートナーとなって…」という一節に合った「絆」「和」「連帯感」というイメージを存分に入れたマークになっています。
参考:大和ハウス工業|企業情報
住友林業
住友林業のロゴは、井桁のマークです。
もともと住友林業は「泉屋」という屋号を持っていました。
そのいずみ(金が湧き出る縁起の良いものの象徴)を表すマークとして、井桁を商標として用いたのが元となり、現在のロゴマークになったのです。
しかし、井桁のマークは昔から商家ののれんなどに多く使用されており、他と区別がつきにくいという理由から、独自の形状・寸法の井桁になりました。
ロゴタイプは、シンプルでモダンなフォントを使用し、信頼感・安心感を与えます。
参考:井桁マークの由来
住宅会社 ロゴの特徴
- 文字の特徴を最小限に簡略化しつつ、可読性に優れているフォントを使用することで、きっちりした印象を与え、信頼感・安心感を与える
- シンボルマークは、「発展」「飛躍」といった未来をイメージさせる意味を込めている
- 昔からの伝統あるマークを使用することで、安定感を出せる
同じ業界のロゴはどんな特徴があるのか まとめ
今回は、よく目にする企業のロゴをピックアップして紹介しました。
同じ業界のロゴを分析するメリットとしては、以下の2点が挙げられます。
- 業界の傾向をデザインに取り入れることができ、ロゴを見た人にどんな業界の会社なのか認識してもらいやすい。
- 傾向を踏まえつつ、あえて異なるデザインにすることで、他社との差別化をはかれる。
最後に、今回分析した業界の特徴を以下にまとめました。
①銀行
- 抽象的なシンボルマーク
- 金融という特に信頼されないといけない業界なため、ブランドカラーも信頼度を高める色
- 『発展』『広がり』『上昇』など、未来をイメージしたデザイン
- 『信頼』『真面目』などの基本的なイメージを入れつつ、銀行ごとの独自性も出ている
②化粧品
- 高級感・洗練された印象を出すには、太すぎない書体が良い
- 日用品など幅広い商品を扱っている会社は、親しみのある(丸みのある)書体、カラーを使用
③外食チェーン
- 誰でも気軽に入れる店という特徴から、親しみやすさのあるデザイン
- 線は細すぎず、どちらかというと太め。
- カジュアルな印象を受けるデザイン
- 寒色より暖色を使用している店が多い(暖色は、料理を美味しく見せる・家族団らんのイメージを与えるため)
④シューズブランド
- 躍動感・スピード感といったスポーツをイメージできる要素をシンボルマークに入れている
- ロゴタイプは、太め・角丸が多く、カジュアルな印象を与えつつ、強さを感じられる
- ロゴタイプでイタリック体(斜体)を使用すると、スピード感が増す
⑤住宅
- 文字の特徴を最小限に簡略化しつつ、可読性に優れているフォントを使用することで、きっちりした印象を与え、信頼感・安心感を与える
- シンボルマークは、「発展」「飛躍」といった未来をイメージさせる意味を込めている
- 昔からの伝統あるマークを使用することで、安定感を出せる
このように、同じ業界のロゴの特徴を調べると、自社のロゴはどのような方向性にしたいかが見えてきます。
もちろんデザイナーは、ロゴ制作の際に業界調査をします。
しかし、依頼者側も他社ロゴの特徴を知っておくと、デザイナーから提案されたロゴに対して意見・検討する際に役立ちますよ。
ここまで分析しなくても、他社のデザインを知っておくだけでもロゴデザイン制作に対する意識は変わります。
自社の大切なロゴですので、検討する際の参考にしてみてくださいね。