日本古来からある「手ぬぐい」は、読んで字のごとく「手をぬぐう」ものではありますが、用途は幅広く、現在ではインテリアにまで使われています。
タオルやハンカチとは違い、手ぬぐいには日本の洒落心がデザインされていることも多いため、外国人観光客に人気があることをご存知の方もいるのではないでしょうか。
今回は、手ぬぐいのデザインに注目して、その魅力をご紹介していきましょう。
目次
用途は色々!使える手ぬぐい
手ぬぐいは手をふくもの、汗をぬぐうためだけのものだけだと思っていませんか?
粗い平織りで作られた手ぬぐいは、タオルやハンカチにはない良さがあるのです。
手ぬぐいを良く見る機会があるとすれば、剣道の時ではないでしょうか。
中学校や高校の体育の授業で、またはお稽古事で剣道を習ったことがある方なばご存知でしょう。
頭に手ぬぐいを巻いてから面をつける…これは汗が顔に落ちてこないように、また頭部への衝撃をおさえるために使っているのだそうです。
手ぬぐいの代わりにタオルを使っても良いかもしれませんが、厚さがあるため頭に巻きにくかったり、面をつける時につけにくかったりするのではないでしょうか。
手ぬぐいのメリット
手ぬぐいには剣道の時以外にも用途があります。
昨今のアウトドア人気の中、街でも山でも使える「スポーツ手ぬぐい」が登場しています。
ファッションブランドであるBEAMSとコラボしたスポーツ手ぬぐいは、アウトドアに興味のない人にもじわじわと人気があるようです。
「アウトドアで使うのであれば、タオルでも良いのでは?」と思われた方も多いでしょう。
タオルにはない使い勝手の良さが、この手ぬぐいにはあります。
手ぬぐいのメリットをご紹介しましょう。
軽い
まずはその軽さです。
登山の時、ランニングの時、キャンプの時にはできるだけ荷物を軽くしたいものです。
同じ大きさのタオルに比べて、手ぬぐいの方が断トツに軽いのは言うまでもありません。
コンパクト
タオルを折りたたんでみた時に、厚みが気になることはありませんか?
ポケットに入れたくても、厚みがあってポケットに入れられないこともあると思います。
手ぬぐいの場合は厚みがなく薄いため、小さく折りたたんでも気になりにくいでしょう。
吸水性がある
タオルと同じように吸水性があるのか心配な方もいるかもしれません。
手ぬぐいは木綿で作られていることが多いため、タオルと同じように吸水性があります。
そのため、剣道の面の下に使われたり、鉢巻として使われているのです。
夏場に帽子をかぶるのが苦手という方には、手ぬぐいを頭に巻いてみては。
頭を守るだけではなく、頭にかいた汗がしたたり落ちないよう防止するなどの効果があるそうです。
速乾性がある
タオルと手ぬぐいは糸の編み方に違いがあります。
手ぬぐいは平織りのため風通しが良く、また端が切りっぱなしで縫われていないため、縫い目に水分が溜まりにくいのです。
そのためタオルに比べて速乾性があります。
たとえ汚れたとしても、すぐに洗って干しておけば早く乾くので、食器拭きなどにも使われているのです。
日本の伝統芸能には欠かせない手ぬぐい
手ぬぐいの誕生は古く、奈良時代の頃と言われています。
当初は、神仏の像や飾り付けなどを清掃するための布として使われていたそうです。
神事の時にしか使われなかった手ぬぐいも、室町時代の頃には、身体をふくための用途として使われるようになりました。
そんな古くからある手ぬぐいは、日本の伝統芸能でも使用されているのです。
例えば、日本舞踊では人物描写として被ったり身に着けたりして、老若男女を表現するだけではなく、舟の櫂などの小道具としても使われています。
また、噺家の必需品と言われる手ぬぐいは、手紙や財布、巾着などといった小道具として活躍しています。
小道具としての使い方以外に、歌舞伎ではお正月や襲名披露などのイベント時に「手ぬぐい撒き」が行われています。
手ぬぐいは「ぬぐう」=「ふく」ということから、「福を撒く」という意味で使われ、歌舞伎役者が験を担ぐ縁起物として手ぬぐいが観客席へと撒かれているのです。
日本人の洒落心と手ぬぐいデザイン
先程の「手ぬぐい撒き」で縁起を担ぐように、日本人は昔から、語呂合わせなど言葉遊びが好きだったのでしょう。
相手を笑わせ、会話を盛り上げるために言葉で遊ぶことが「洒落心」なのではないでしょうか。
かく言う手ぬぐいのデザインにも、日本人の洒落心が隠されています。
思わず「なるほど!」とうなずいてしまう洒落心がつまったデザインをご紹介しましょう。
かまわぬ
言葉遊びと同じように、江戸時代に人々を楽しませていたのが「判じ物」です。
判じ物とは、絵解きのことで、記号や絵などの組み合わせによって、その意味を推測して楽しむ粋な遊びのことをいいます。
この手ぬぐいには「鎌」の絵に「〇印」、そしてひらがなの「ぬ」が描かれており、これで「かまわぬ(構わぬ)」と読ませているのです。
歌舞伎役者の市川団十郎が舞台で発した「かまわぬ」というセリフが巷で流行したことで、市川團十郎本人も好んでこの判じ物のデザインを使ったと言われています。
六瓢(むびょう)
6つの大小のひょうたんがちりばめられたデザイン。
6つの「六(む)」とひょうたんの「ひょう」から「むびょう」と読ませ、「無病」にかけています。
これも判じ物といえるでしょう。
一見すると、ひょうたんが描かれているだけの手ぬぐいではありますが、言葉遊びが粋に取り入れられている、洒落たデザインといえます。
絵画の代わりにも?インテリアに使える手ぬぐい
手ぬぐいには、判じ物や言葉遊びといった洒落心をデザインされたものばかりではありません。
有名な浮世絵や歌舞伎役者が描かれているものや、花鳥風月などを題材に小さな柄をちりばめた小紋柄、そして四季折々の風景が描かれているものもあります。
また、最近ではファッションブランドやクリエイターとコラボしたデザインの手ぬぐいまであり、多種多様です。
手ぬぐいを広げると、まるで絵画を見ているような錯覚に陥ってしまうデザインのものもあり、昨今、手ぬぐいをインテリアにと購入する人が増えているそうです。
手ぬぐいをタペストリーとして飾ったり、額に入れて飾るなど、インテリアにも使うことができるデザイン性の高い手ぬぐいが増えています。
〇〇とコラボ?最近のデザインの傾向
「鳥獣戯画」の手ぬぐいをどこかで見かけたことはありませんか?
昨今、NHKの2020応援ソング「パプリカ」の動画でも注目されている「鳥獣戯画」は、ウサギやカエルやサルといった動物たちが擬人化されて、宴会や相撲、水遊びなどを繰り広げている絵巻物のことです。
この鳥獣戯画をテーマに、タリーズコーヒージャパンは2013年から手ぬぐいブランド「かまわぬ」とコラボした手ぬぐいを販売しています。
動物たちがタリーズコーヒーで楽しくコーヒータイムを過ごしていたり、反対にコーヒーを淹れていたりと、全体的にほっこりとしていてユニークなデザインです。
このように昨今、企業で制作する手ぬぐいは、有名な芸術作品とコラボしたり、江戸時代からの伝統柄など、色々な作品とコラボする傾向にあるようです。
販促品にぜひ参考にしたデザインをご紹介
続いてご紹介するのは、クリエイターではなく、落語の噺家がデザインしたものです。
デザインが秀逸なのでご紹介します。
この手ぬぐいは、江戸家小猫という噺家が自らデザインしたものです。
噺家としてマメさと一歩一歩の精進を、豆絞の古典柄と、名前のちなんで猫の足あとで表現しています。
また、「二代目江戸家小猫」でもあり、ゆくゆくは「五代目江戸家猫八」にという想いから、猫の足あとの2歩目と5歩目には違う色味で色付けされています。
この手ぬぐいには江戸家小猫の強い意志と希望がデザインされています。
今は噺家として活躍されていますが、もともとは大学院でデザインを専攻されていたとか。
ユーモアの中に江戸家小猫の強い想いが表されているこのデザインはぜひ参考にしたいものです。
もし手ぬぐいを販促品とする時には、企業の想いを直接表現するのではなく、洒落心を持ってオシャレにデザインしてみてはいかがでしょうか。
使い方は自由自在!店舗のインテリアから販促品まで使える手ぬぐいの魅力とは まとめ
使い勝手の良い手ぬぐいは、水分をぬぐうだけではありません。
タペストリーや額に入れて飾るなどしてインテリアに使うもよし、人目をひくデザインで販促品として使うもよし…活用方法はさまざまです。
「手ぬぐいなんて昔の人が使っていたものでしょう?」なんて思わずに、生活を豊かにするものとして、また企業戦略の手段として、どんどん取り入れていきましょう。