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東京でデザイナーが成功するために必要なこととは? 資料から読み解くクリエイティブ産業シリーズ~東京都編~

東京でデザイナーが成功するために必要なこととは? 資料から読み解くクリエイティブ産業シリーズ~東京都編~

国や自治体では、クリエイティブ産業やクリエイターについて、さまざまな資料を発表しています。

デザインのコト。では、興味深いクリエイティブ産業の資料をシリーズでご紹介します。

今回は、東京都産業労働局が行った平成26年度政策調査の「クリエイティブ産業の実態と課題に関する調査」報告書を基に、東京都におけるクリエイティブ産業の実態をご紹介します。

東京都に集積するクリエイティブ産業

東京には、コンテンツ・デザイン・ファッションなど、多彩なクリエイティブ産業が集結しています。

ひとことで「クリエイティブ産業」といっても、どんな業種が対象になるか分かりづらいですよね。

そこで、「クリエイティブ産業の実態と課題に関する調査」報告書では、経済産業省の定義を踏まえて、クリエイティブ産業の範囲を次のように定めています。

対象業種 具体例
① 芸術 画家、書家、骨董商など
② 舞台芸術 日本舞踊、劇団など
③ 音楽 音楽・CD 製作会社、音楽プロダクション、楽団など
④ 映画・ビデオ・写真 映画・映像制作会社、写真家など
⑤ テレビ・ラジオ・報道 放送局、制作会社、新聞社など
⑥ アニメ アニメ制作会社など
⑦ ゲーム ゲーム制作会社など
⑧ ファッション 服飾小物・装身具メーカー、テキスタイル、服飾デザインなど
⑨ デザイン グラフィック、インダストリアル、ウェブ・CG デザインなど
⑩ 広告 広告代理店、広告制作会社など
⑪ 出版 出版社など
⑫ 情報サービス ソフトウェア制作会社、インターネット関連会社など
⑬ 日用品 玩具、家具、食器、文具、雑貨等メーカーなど
⑭ 工芸品・装飾品 工芸制作・デザイン、宝石・貴金属制作会社など
⑮ 観光・飲食 旅行代理店、旅館・ホテル、日本料理屋、すし店など
⑯ 建築設計 建築設計など

引用元:平成26年度 政策調査クリエイティブ産業の実態と課題に関する調査報告書

これを見ると、クリエイティブ産業というのは非常に幅が広く、多彩な業種が関わっていることが分かります。

国内のクリエイティブ産業の売上の内38.3%を東京都が占めている

総務省が発表した2012年の「経済センサス活動調査」によると、日本国内のクリエイティブ産業の事業所のうち14.0%にあたる80,115が東京都に集結しています。

都内のクリエイティブ系事業分野の全産業に占める割合は12.8%と、東京都内にはクリエイティブ産業の事業所が多くあることが分かります。

立地エリアでは、都区部で「上野・浅草・両国エリア」が1割を占めています。

また、従業員数は1,118,831人で、24.5%にものぼっています。

さらに、東京都クリエイティブ産業の売上金額・付加価値額は60,586億円で、国内のクリエイティブ産業の売上の実に38.3%を東京都が占めているのです。

東京都は、クリエイティブ産業においても、日本をけん引していく重要なエリアといえます。

ビジネスの運営方法

報告書では「主に直接クライアントから受託」している事業所が約4割、「自社での開発・制作・販売」を行っている企業が約3割と紹介しています。

主に直接クライアントから受託している事業所は、デザイン(グラフィック)で8割、デザイン(インダストリアル)で約7割と、デザイン関係が多い状況です。

今後の取引の方向性では、「既存事業分野の顧客との取引拡大」が約3割、「主要顧客との結びつきを強化したい」が約2割を占めますが、「新しい事業分野・業種との取引参入」を視野に入れている事業所も約1.5割あります。

つまり、「新規顧客獲得を積極的にしていきたい」と考えている事業所も多くあるのです。

また、取引のあるフリーのクリエイターがいる事業所は約5.5割で、法人だけではなく個人事業主が多く活躍しているのが分かります。

そのため、クリエイティブな仕事を外注する際には、業務内容や納期そして料金などの基本的な契約事項だけではなく、委託や秘密保持契約(NDA)にも配慮する必要があります。

取引先の立地って?

取引先の立地は、「同市町村内」が約2.4割、「近隣区市町村内」が約3割、「そのほか都内区市町村」が約3割で、「他県」が約2.7割、「海外」は約0.5割でした。

「地域を限定しない一般消費者」という回答も約2.5割ありました。

インターネット上でのビジネスマッチングも盛んになっていますが、WEBで契約から納品まで全てを完結するためには、受注者と発注者双方の知識や経験が必要です。

そのためには、一度顔を合わせた上でアイデアを出し合うことも、時には必要でしょう。

単に東京都に事業所が多く集結しているというだけではなく、対面の必要がある仕事も依然として根強いようです。

クリエイターは実力主義!?

クリエイターについて重視する学歴・実績等の項目では、回答を点数化して傾向を紹介しています。

クリエイティブ業界全体の回答では、「職業としての能力」 が0.78、「貴社事業分野での業務経験、実績」が0.57と高くなりました。

特に「貴社事業分野での業務経験、実績」は、デザイン(インダストリアル)で0.87と突出しています。

さらに、「職業としての能力」は、デザイン(インダストリアル)で 0.91となりました。

デザイン(インダストリアル)分野では、事業分野の学歴やコンテストなどの受賞歴ではなく、実力やスキルが重視されるようです。

新規クリエイターは実績を積むことが大切

仕事を依頼する際には、過去の作品や実績を参考にするケースが多くありますよね。

自社の強みに関する設問では「事業実績」や「注文への対応力」そして「技術・作品・サービス・開発力」などを挙げる企業が多くありました。

特に「事業実績」に関しては、デザイン(インダストリアル)で9割弱、デザイン(その他)で約8割と、デザイン分野で事業実績を強みとしている事業所が多くあります。

つまり、デザイン関係では、仕事を引き受けて実績を積むことで、新たな仕事が繋がるケースが多いのです。

デザイン関係の仕事を依頼する際には、実績もきちんと確認した方が良いかもしれません。

業種によってはつながりが重要になることも

また、「業界内外のネットワークがあること」は芸術が0.42でトップ、「同業者・関連業者等からの推薦」をあげたのは、音楽が 0.27、芸術が0.25、舞台芸術が0.20となっています。

これらの業種では、実力以外の要素も仕事につながる重要な要素といえそうです。

参考:東京都産業労働局 平成26年度政策調査「クリエイティブ産業の実態と課題に関する調査」報告書

東京でデザイナーが成功するために必要なこととは? 資料から読み解くクリエイティブ産業シリーズ~東京都編~ まとめ

東京都のクリエイティブ産業の実態をご紹介しました。

これらの資料に触れることで、クリエイティブ産業を正しく理解し、気持ちよく取引を進めることができるようになります。

ご紹介したように、都内には全国の24.5%ものクリエイターが集結しています。

素敵なクリエイターさんと出会いたい方は、東京都に軸を置くクリエイターさんにも注目してみてくださいね!