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ユニバーサルデザインとは?歴史と身近な事例をご紹介

ユニバーサルデザインとは?歴史と身近な事例をご紹介

2020年に行われる東京五輪・パラリンピック。日本政府は、世界各国から訪れる全ての人たちのために、公共施設などのユニバーサルデザイン化を推奨しているのをご存知でしょうか。

もし、日本各地の公共施設などでユニバーサルデザイン化が実行された場合には、訪れた世界各国の全ての人たちへの「おもてなし」となることでしょう。

では、この「ユニバーサルデザイン」とは一体どのようなデザインなのでしょうか。

何となくはわかるけれども、きちんと説明できないという方も多いかもしれません。

今回は、ユニバーサルデザインとは何か、私たちの生活の中で施されている製品を例に挙げてご紹介します。

ユニバーサルデザインとは?

ユニバーサルデザインという言葉を分解してみると、「ユニバーサル」は「全ての、普遍的な」という意味があります。

また、「デザイン」には「考え・計画・設計」という意味があります。

つまりは国籍や性別、年齢、障がいの有無にかかわらず、全ての人が利用できるデザインということです。

このユニバーサルデザインは、製品や建物、空間だけではなく、情報やサービス、思いやりの心といったソフト面も含まれます。

ユニバーサルデザインの誕生

ユニバーサルデザインという言葉は、1980年代に誕生しました。

それ以前からも、福祉先進国であるデンマークを中心に、1963年にノーマライゼーションが提唱されていたため、ユニバーサルデザインに近い考え方は存在していました。

※ノーマライゼーション:身体的、または精神的な障害を持っている人であっても健常者とともに可能な限り、健常者が送っているような普通の生活をおくる権利があるという考え。

同じ頃、アメリカでは障がいを持つ人が急増します。

自身も障がいを持ち、車椅子生活を送っていたロナルド・メイスは、全ての人があらゆる分野で差別を感じることがないよう提唱しました。これがユニバーサルデザインです。

ユニバーサルデザインの7原則

ユニバーサルデザインは、「全ての人が利用できるデザイン」です。

この考えを明確にするために、提唱したロナルド・メイスをはじめ、建築家や工業デザイナー、技術者、環境デザイナーなどにより、以下の7つの原則をまとめました。

ただし、全てを取り入れなくてはいけないわけではありません。

7つの原則のうち、どれかひとつでも取り入れることができれば、ユニバーサルデザインといえます。

1.公平性

  • 利用する人が誰でも同じように操作できること
  • 利用する時に特別扱いや差別を受けることがないこと

2.柔軟性

  • 利用する人の好みや能力に合わせられること
  • 使い方を選べること

3.単純性

  • 利用したことがない人でも、見るだけで使い方がすぐにわかるように、単純で直感的に利用できること

4.明確さ

  • 誰にでも情報が伝わるように、絵や文字、音や光など、できる限り色々な表現で情報を伝えること
  • 大切な情報はできる限り強調してわかりやすくすること

5.安全性

  • できる限り危険やミスを防止するために、警告を出して知らせること
  • 操作を誤っても安全に使用することができること

6.省体力

  • 利用する時に、できる限り身体への負担がかからないこと
  • 少ない力でも利用できること
  • 長時間利用していても疲れないこと

7.空間性

  • 誰にでも利用しやすいスペースや大きさを十分に確保していること

私たちの身近にあるユニバーサルデザイン

では、私たちが身近なところで見ることができるユニバーサルデザインの製品はどのようなものがあるのでしょうか。

ユニバーサルデザインの製品例を場所別に見ていきましょう。

家の中にあるユニバーサルデザイン例

シャンプーのボトル

シャンプーのボトルに凹凸状のきざみがあるのをご存知でしょうか。

これはシャンプーとコンディショナーのボトルが同じで紛らわしく、区別がつかないため、間違って使ってしまうといった消費者の声をもとに開発されたものです。

触っただけでシャンプーとコンディショナーの区別ができるようになっています。

このきざみは当初、メーカーによって位置が異なっていました。

しかしこれだと利用者が混乱してしまうため、シャンプーボトルのみにきざみを付けることを業界統一としました。

これで目の不自由な人だけではなく、髪を洗う時に目をつぶっている時でも区別ができるようになりました。

電気スイッチ

従来の電気スイッチは、電球の近くに紐が付いている、もしくは壁に取り付けられている小さなものが一般的でした。

しかしこれらは背の低い子供や高齢者、また車椅子利用者や目の不自由な人にとっては不便だったため、現在よく見かける大きなスイッチが誕生します。

これなら、少ない力で簡単に電気のオン・オフができます。

また、健常者であっても両手がふさがっている場合に、手を使わなくともスイッチを押すことができるようになりました。

ペットボトル

昔は「水=無料」というイメージが有りましたが、今では水を買う人が多くなりました。

携帯用に500mlのペットボトルを、家用に2Lのペットボトルを常備している方もいるのではないでしょうか。

実は2Lのペットボトルにはあって、500mlのペットボトルにはないものが。。

2Lのペットボトルには、側面中央部にくぼみがあって、小さい手であっても重いペットボトルを持ちやすくするための工夫をしているのです。

その他にもペットボトルを捨てる際、ラベルを剥がしやすいようにミシン目が入っているなどの工夫もされています。

低い敷居

昔ながらの日本家屋ではたくさんの敷居や高い段差がありました。そのため段差につまずいてしまった経験がある方も多いと思います。

高い段差があることで、足を上げることが困難になってきた高齢者や、脚が不自由な人、そして車椅子利用者にとっては大きな障害となり、不便でした。

この段差を低くしたり、なくしたりすることで、段差につまずくことなく安全に生活できるようになりました。

家の外にあるユニバーサルデザイン例

自動ドア

ドアには引き戸や開き戸といった、手を使わなくては開けることができないものがあります。

これらのは身体に障がいがある人や車椅子利用者にとっては使いづらいものでした。

しかし、自動ドアなら触れることなく開閉することができるため、使いづらいと感じていた人たちだけではなく、小さな子どもや両手に荷物を抱えた人にとっても便利なものとなったのです。

標識(ピクトグラム)

世界各国から日本を訪れる人にとって、不便と感じるのが日本語標識です。

私たち日本人であっても、海外へ行った時にその国の言葉がわからずに、右往左往してしまうこともあると思います。

公共施設などでよく見かける車椅子や男性・女性トイレ、また非常口や禁煙のマークは、日本語や漢字がわからない外国人や小さな子どもをはじめ、誰が見てもすぐわかるデザインに工夫がされています。

ノンステップバス

これまでのバスは、乗車の際足をあげて乗車することが一般的だったと思います。

そのため、足を上げることが困難になってきた高齢者や車椅子利用者の場合は、他の人に手伝ってもらい乗車をしていました。

しかし、段差を極力減らして足を上げる負担を減らしたノンステップバスにより、高齢者であっても車椅子利用者や小さな子どもも乗り降りが簡単になったのです。

手すり

公共施設などの階段には、必ずと言って良いほど手すりがついています。

しかし、必ずしも使いやすいものばかりではありません。

従来のまっすぐの手すりの場合、体重をかけると滑りやすいというデメリットがありました。

しかし、くねくねと曲がった波状の手すりは、取っ手のように使える垂直部分と、杖のように使える水平部分があるため、体重がかけやすく、滑りにくいというメリットがあります。

ユニバーサルデザインとは? まとめ

ユニバーサルデザインの製品が普及することにより、私たちの生活は以前に比べて、より便利になりつつあります。

2020年に向けて、日本政府が推奨していることもあり、ものづくりをしている各企業では、ユニバーサルデザインへの切り替えが進んでいくのではないでしょうか。

また、製品や建物、空間だけではなく、私たちの意識の中にも、国籍や性別、年齢、障がいの有無にかかわらず、全ての人を尊重し、理解しようとするユニバーサルデザインの考えを持つことが必要になることでしょう。