デザイン紹介

包装紙に込める想いとは?百貨店の包装紙デザインに見るブランドイメージ

もらった贈り物が有名な百貨店の包装紙に包まれていると、いいものをもらったなという気分になる方は多いと思います。

今や包装紙は百貨店の顔であり、包装紙のデザインが百貨店のブランドと言えるのかもしれません。

特にお中元やお歳暮ではその効果を発揮する包装紙。

商品を包むだけではない包装紙のデザインに込める想いをご紹介します。

百貨店の顔!包装紙誕生の歴史

富岳三十六景で有名な葛飾北斎は、浮世絵師としてだけではなく、門下生のための教本を作成したり、包装紙や菓子袋などのデザインをしたりと、今でいうマルチクリエイターであったのをご存知でしょうか。

19世紀になると、当時の貿易相手国であるオランダへ日本製の陶磁器が輸出されていました。

その陶磁器の包装紙に、北斎が門下生のために描いた「北斎漫画」が描かれていたのです。北斎漫画は門下生のための教本であったため、多くの人へいきわたらせるために版画で量産していました。

ある時、フランス人画家が日本製の陶磁器を購入する時に包装紙のデザインであった北斎の素晴らしい絵に感動し、陶磁器とあわせて包装紙も一緒に購入。

それにより、フランスからジャポニズムブームが生まれ、ヨーロッパの印象派の画家たちに大きな影響を与えたのです。

昨今、日本へ訪れる外国人観光客が浮世絵を好んで購入するのは、包装紙のデザインに北斎漫画が描かれていたことが所以なのかもしれません。

風呂敷から包装紙へ

日本における「モノを包む」歴史は、なんと奈良時代までさかのぼります。

奈良時代には、舞楽などで使用する衣装を包む布のことを「つつみ」と呼んでいました。

その後、お風呂に入る時に、服を包んだ布を開き床に敷いて、そのうえで服を脱ぎ着していたことから、その布のことを「風呂敷」と呼ぶようになりました。

江戸時代以降、布の染色文化や加工文化が進み、日本最古の百貨店とも言われている「三越」においては、明治時代中期まで風呂敷を使って商品を包んでいました。

西洋から製紙技術が輸入され、洋紙が普及した1890年代に三越でも初めて商品を包む「包装紙」が誕生したのです。

百貨店オリジナルの包装紙の誕生

百貨店の包装紙は当初、百貨店の屋号やロゴがデザインされたものでした。

大正時代に入ると、包装紙のデザインには、屋号やロゴだけではなく、館内案内図や本店・分店の紹介、また東京近郊の路線図など、広告や情報媒体として利用されるように。

そんな中、現代のような百貨店オリジナルの包装紙ができたのは、第二次世界大戦後、日本が敗戦から立ち上がろうとしている1950年に三越がクリスマスにあわせてデザインしたのがはじまりだと言われています。

包装紙に込める想いとは?百貨店の包装紙を見てみよう

百貨店の包装紙というと、どの百貨店のデザインが思い浮かびますか?

全国にある百貨店もあれば、その地方にしかない百貨店もあるでしょう。

それぞれの百貨店のブランドイメージが異なるように、包装紙のデザインにもコーポレート・アイデンティティがあるのです。

百貨店の顔であり広告塔でもある包装紙のデザインには、それぞれの百貨店の想いが詰まっています。

誰もがご存知の2つの百貨店を例として、包装紙に込める想いを見ていきましょう。

三越 華ひらく

画像引用元:三越の公式オンラインストア

「百貨店の顔となるオリジナルのデザインを作ろう」という話が持ちあがり、老舗百貨店の三越が手掛けたデザインが「華ひらく」です。

この包装紙デザインは百貨店オリジナルの包装紙デザインの第一号であり、1950年という戦後間もない頃に「戦後の暗い世相に光を」をモットーに包装紙をデザインしようと試みます。

三越の宣伝部は、猪熊弦一郎画伯にデザインを依頼。

画伯が千葉・犬吠埼を散歩中に、波に洗われる石をみて「波にも負けず、頑固で強く」をテーマにしようと考え、このデザインが生まれました。

このテーマは三越が考えていた「戦後の暗い世相に光を」というモットーにも合い、「みんなで力強く生きて世の中を明るくしていこう」という想いが込められています。

その頃、三越の宣伝部だった、あのアンパンマンの作者で有名なやなせたかし氏が、画伯からデザイン画を受取りに行くのです。

デザイン画を受取った時、抽象的な赤い切り抜きが白い紙にテープで仮止めされているだけでした。

しかし、その紙で商品を包んでみると、花が咲いたようにパッと明るくなるのを見て、やなせ氏も驚いたそうです。

抽象的な赤い形の中に、「mitsukoshi」とローマ字を入れたのが、やなせ氏と言われています。

高島屋 輪バラ

画像引用元:高島屋オンラインストア

高島屋といえばピンクや赤いバラを思い浮かべる方も多いかもしれません。

このバラのデザインの包装紙が誕生したのは1952年のこと。

当時、高島屋の社長であった飯田慶三氏は、社長でもありましたが洋画家という一面も持っていました。

花の中でも好んでバラの花を描いていたという飯田社長は、美の象徴であるバラを高島屋のシンボルフラワーにすることを決定。

バラの花が四季を問わず多くの人から慕われるように、百貨店としてもお客様に愛される店でありたいという想いが込められています。

バラをシンボルフラワーとしてからというもの、包装紙だけではなくカレンダーや年賀状の柄、そして高島屋提供のラジオ番組のBGMを「ラビアンローズ」にするまでの徹底ぶり。

現代の包装紙デザインは4代目となりますが、徹底してバラのデザインにこだわり続けています。

現在の4代目デザインには、「変わらないのに”新しい”」という高島屋のメッセージも込められているそうです。

顧客の記憶に残したい!包装紙デザインに大切なこと

事例として2つの百貨店の包装紙デザインを紹介しましたが、顧客に「〇〇(という百貨店)なら、この包装紙デザイン」とすぐに思い浮かべてもらえるようなデザインにするには、どのようなデザインすれば良いのでしょうか。

ただ目立つだけ、オシャレなだけでは、顧客の記憶に残る包装紙とはならないでしょう。

企業のブランド力を高めるためにも、取り扱っている商品や企業のイメージが、誰が見てもダイレクトに伝わるデザインでなければ、記憶に残らないのです。

包装紙のデザインは、色調とともにどのような紙を使うのかも大切なポイントです。

しかし、あれもこれもとさまざまなデザインを取り入れてしまうと、反対にブランディングを感じることもできずに印象が薄くなってしまいます。

シンプルかつ、商品や企業の想いが込められているデザインにすることで、ブランディングを感じる、顧客の記憶に残るデザインとなるのではないでしょうか。

イメージ一新!誰でも知っているあの百貨店の包装紙デザインが変わる

画像引用元:三越伊勢丹グループ

2019年2月に伊勢丹の包装紙デザインが22年ぶりに変更となりました。

伊勢丹というと、赤色・黄色・緑色のタータンチェック柄のショッピングバックで有名なので、包装紙も同じデザインなのでは?と思われる方もいると思います。

包装紙のデザインは赤地と青地に同色で「ISETAN」と描かれたシンプルなデザインでした。

しかし、今回のデザインは「radiance」という光が放射状に広がる「無限の広がり」を表現したもの。

贈り物が贈る人と贈られる人とをつなげるものであるように、包装紙に描かれている赤色、黄色、緑色の線が途切れることなく広がり、現在だけではなく未来までも広がっていくという想いが込められています。

ショッピングバックで使われているタータンチェック柄の3色を使うことで、ショッピングバックと包装紙の親和性も以前のものとは異なります。

この「radiance」デザインは、タータンチェック柄のショッピングバックとのコーディネートにより、贈り物がより一層魅力的に見えるデザインというのも特徴の一つです。

※情報は2019年11月25日時点のものです。

包装紙に込める想いとは?百貨店の包装紙デザインに見るブランドイメージ まとめ

今回は百貨店の包装紙を例として挙げていますが、菓子店や雑貨店など贈答品を扱う店舗においては同じことが言えるのではないでしょうか。

顧客の記憶に残るデザインにするためには、まず企業ブランディングができていることが必要です。

商品や企業への想いを込めたデザインの包装紙で、企業のブランド力を高めていきましょう。