資料で読み解く自治体のクリエイティブ産業

デザイナーへの発注のポイントもわかる!資料から読み解くクリエイティブ産業シリーズ ~ 国内デザイン業界編 ~

デザイナーへの発注のポイントもわかる!資料から読み解くクリエイティブ産業シリーズ ~ 国内デザイン業界編 ~

クリエイティブ産業やクリエイターについて、国や自治体が中心となり、さまざまな資料が発表されているのをご存じですか。

資料にはデザイナー、そして発注者である企業にとってメリットのある情報が多数掲載されています。

しかし、内容を読み解くのが難しかったり、そもそも資料に目を通す機会がなかったりして、有益な情報を見落としている方は少なくありません。

デザインのコト。では、こうした興味深いクリエイティブ産業の資料をシリーズでご紹介しています。

今回は、経済産業省クールジャパン政策課デザイン制作室が発表している、「デザイン政策ハンドブック2018」を基に、国内のデザイン業界の実態を探るとともに、資料から読み取れる、デザイナーへ発注する際のポイントについてもご紹介します。

日本のデザイン政策

クールジャパン戦略の流れの中で、政府は国を挙げてデザインやクリエイティブの力を活用し、積極的に世界にアピールをしています。

デザインの定義

「デザイン」というと、絵や図案、また製品など、モノの姿や形が浮かぶ人が多いと思います。

しかし、注意深く考えていくと、造形行為だけではなく、生み出すまでの計画もデザインに含まれているのです。

「空間のデザイン」という言葉が指すように、具体的な物質としての形がなくてもデザインの対象になります。

さらに、現在ではデザインの考え方が変化してきています。

領域横断型のデザインであったり、システムや関係性といった資格でとらえることができないものも増え、その領域が広がりを見せているのです。

そのため本書では、デザインプロセスは作る要素だけにとどまらず、「気付く・考える・伝えるといった要素も含むものである」と定義しています。

デザイン政策の3つの柱

デザイン政策では、以下の3つが大きな柱になります。

(1)経営

少子高齢化の進行や国内企業の競争力の低下よって、人口減少が進み市場規模は縮小していくことでしょう。

そうした流れの中で個々の企業が、国内のみのとどまらず、海外を視野に世界市場の中で独自のポジショニングを構築することが重要になります。

そのためには、経営者がデザインをその中核に取り入れ、アイデンティティの統合を訴えることも大切な取り組みのひとつです。

(2)教育

先ほど触れたように、デザインはモノだけに限らず、サービスや街づくり、そして社会問題の解決などにも活用することができます。

こうしたデザインを考えることができる人材を育成したり教育したりすることも大切なポイントです。

(3)国際化

日本国内のデザインは、戦後飛躍的に発展し成長を遂げてきました。

今後はさらに世界市場に進出していく必要があります。

そのため、海外展示会での情報配信やグッドデザイン賞の国際化、デザインを通じた国際協力にも力を入れ、世界に日本のデザインを発信していくことが重要です。

デザイン業界の実態

2019年9月末現在、国内のデザイン業界の事業所数は減少傾向にあり、2009年には10,000超だったのが、2014年には9,010まで落ち込んでいます。

事業所の年分布では、デザイン事業の約半数が東京都(36%)・大阪府(14%)に集積しています。

後に続くのは愛知県(6%)、神奈川県(5%)、ですが開きが大きく、デザイン産業の事業所は大都市集中型といえるでしょう。

フリーランスのデザイナーは約22%

デザイナー数は、2000年には16.1万人でしたが、2005年には16.5万人、2010年には18.0万人と増加傾向にあります。

デザイナーの男女比率は57:43 で、男性がやや多いです。

年齢構成は、男性は30代が多く、それ以降は緩やかに減少をしていますが、60歳以上のシニア世代が8,000人以上も活躍しています。

女性は、10代~20代では男性よりも数が上回りますが、20代後半をピークとして、40代以降急速に数が減る傾向にあります。

2010年に総務省が行った国勢調査では、従業上の地位は、雇用者もしくは正社員(インハウスデザイナー)が137,110人、全体比率は76.4%です。

フリーランスは40,040人、22.3%であり、フリーランスとして活躍している方も多い業界といえるでしょう。

デザイン業界の売り上げ

事業所の構成では、従業員が4人以下の事業所が78%であり、5~9人と回答した14%を加えると、約9割を超える事業所が10人未満の小規模な事業所ということが分かります。

また売り上げ規模は、1,000万円未満が41%と最も多く、次いで1,000万円以上3,000万円未満が28%と続きます。

続いて、業務種類別の年間売上高(事業従業員数5人以上)に目を向けてみましょう。

2014年の総売り上げは213,659百万円、グラフィックが売上高122,839百万円で57.5%を占めています。

その他(9.8%)、マルチメディア(7.1%)と続きますが、グラフィックデザインが中核業務であることが見て取れます。

報告書から読み解くデザイナーへの発注 3つのポイント

デザイン業界に関する様々な数値をご紹介しましたが、それらを基に本項で報告書から読み解くデザイナーへの発注のポイントをまとめてみました。

①東京都・大阪府は対面での依頼先が多い

WEBマッチングサービスが増えていますが、対面での依頼にこだわりたい方は、東京・大阪で探すと見つかりやすいでしょう。

とはいえ数が多いと、どこに依頼すればいいのか迷ってしまうものですよね。

大阪府大阪市には、大阪市経済戦略局文化部文化課が運営している「大阪芸術事情」がありあす。

こうしたWEBサービスを利用して、対面で仕事を進められるデザイナーを探のがお勧めです。

また、デザイナーやクリエイターのマッチングを積極的にしている自治体も数多くあります。

過去にデザインのコト。でもご紹介していますので、そちらも併せてご検討ください。

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②リスク対策をしっかりと

デザイン業界は小規模事業所が多く、デザイナーの約22%はフリーランスです。

自営業や法人化していない場合もありますので、発注時のリスクについて学んでおくことが大切です。

フリーランス向けの補償を行っているサービス「FREENANCE」では、フリーランスや個人事業主の登録者を対象に、無料で補償を提供しています。

仕事中の事故だけではなく、著作権侵害や情報漏洩、納期遅延なども補償の対象です。

発注するデザイナーがフリーランスや個人事業主の場合には、こうしたサービスを利用するのも良いかもしれません。

また、トラブルを避けるためにも、契約前に業務内容や報酬そして納期をしっかりと確認しましょう。

特に初回の取引時は、確認事項が多くなるものです。

コミュニケーション工数を多めに見積もって、ゆとりあるスケジュールを組むことが大切です。

ミドル・シニア世代の女性デザイナーは貴重!

ターゲットにあったデザイナーを探したい場合、得意とする分野だけではなく、「ターゲットの年齢層とのマッチング」も大切なポイントです。

例えば、シニア向けのデザインを依頼したいのに、経験もノウハウもない10代のデザイナーを起用するのはそぐわないといえます。

デザイナーの年齢・性別分布で最も少ないのが、ミドル・シニア世代の女性デザイナーです。

ミドル・シニア世代の女性デザイナーにこだわって探したい場合には、スケジュールにゆとりを持つのがお勧めです。

比率が少ないということは、「探しづらい」ということです。

WEBマッチングサービスを活用すると良い出会いがあるかもしれません。

おわりに

日本国内のデザイン業界及びデザイナーの実態をご紹介しました。

こうした資料に触れることで、デザイン産業をより理解して、気持ちよく取引を進めることができます。

素敵なクリエイターさんと出会うために、是非ご活用ください!